◎ロシア当局は2016年にメモリアルを「外国エージェント」に指定した。
2021年12月28日/ロシア、首都モスクワの連邦最高裁判所前、国際人権団体メモリアルの閉鎖に抗議する市民と治安当局者(Getty Images/AFP通信)

12月28日、ロシアの最高裁判所は国内で最も著名な国際人権団体「メモリアル・インターナショナル」に閉鎖を命じた。

メモリアルは1980年代後半に設立された人権団体で、旧ソ連の政治的抑圧に関する研究は国際的な称賛を集め、ペレストロイカの父と呼ばれノーベル平和賞を受賞したアンドレイ・サハロフ氏が初代会長を務めた。

ロシア当局は2016年にメモリアルを「外国エージェント」に指定した。このグループに指定された団体や個人は当局の厳しい監視の対象になり、場合によって過激派組織に格上げされることもある。

当局は今年10月、メモリアルのモスクワ事務所を襲撃し、職員のパスポート、住所、電話番号、教育に関する資料など、あらゆる情報を提出するよう命じた。

1か月後、ロシア検察庁は外国エージェントの指定に違反したとして、メモリアルの閉鎖を求める訴訟を起こした。

検察側は、「メモリアルは誤った情報で旧ソ連のイメージを汚した」と主張したが、メモリアルは検察の主張をすべて拒否した。

メモリアルは28日の声明で裁判所の判決を非難した。「この判決により、旧ソ連政府が組織した政治的テロの歴史が深刻な問題であることを再確認できました。メモリアルは国の悲劇的な歴史、虐殺された数百万人の運命、そして旧ソ連の真実を追求し、国民に発信し続けます。悲劇的な過去をなかったことにすることはできません」

メモリアルの弁護士のひとりは別の声明で、判決に異議を申し立てると明らかにした。

モスクワの裁判所前に集まった人々は判決に抗議し、「恥!」と叫んだ。現地メディアによると、治安当局は抗議デモに参加した数人を連行したという。

欧州評議会のマリヤ・ペイチノビッチ・ブリッチ事務局長は判決を「壊滅的なニュース」と呼び、非難した。

人権NGOアムネスティ・インターナショナルは判決を、「大粛清の記憶をうやむやにしようとする国家主導の露骨な試み」と呼んだ。「ロシア当局は犠牲者を侮辱しています...」

ジョン・サリバン米国大使は28日、「表現の自由を抑圧し、歴史を消し去ろうとする露骨で悲劇的な試み」とツイートし、判決を嘆いた。

フランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン外相は閉鎖命令に「憤慨と懸念」を表明し、判決を「ひどい損失」と呼んだ。「フランスはロシアの歴史研究と人権擁護に対する弾圧に深刻な懸念を表明します...」

現地メディアによると、メモリアルの姉妹組織であるメモリアル人権センターも閉鎖される予定であり、29日午前に別の法廷審問が行われるという。

ロシア当局はここ数カ月、権利団体、独立系メディア、反対派ジャーナリストを厳しく取り締まり、数十人を海外の支援を受ける外国エージェントに指定した。その一部は「望ましくない」という理由で非合法化され、治安当局の暴力に直面した。

当局は先週、政治犯の逮捕に焦点を当てる著名な人道団体OVD-infoのウェブサイトをブロックしたうえで、「過激派とテロリストの行動を正当化している」と非難し、ソーシャルメディア・プラットフォームにグループのアカウントを削除するよう要求した。

OVD-infoは28日の声明でメモリアルに対する閉鎖命令を却下した。「メモリアルは旧ソ連の大粛清と弾圧を後世に伝える機関です。メモリアルの閉鎖は独裁者ヨシフ・スターリンの粛清を正当化することに等しく、到底受け入れられません...」

一方、現地メディアによると、当局は28日、投獄された野党党首アレクセイ・ナワルニー氏の同僚5人を拘留したという。ナワルニー氏に関連する組織はすべて非合法化されている。

当局は2014年のクリミア併合後にメモリアルに対する圧力を強化し、親プーチン勢力を煽った。メモリアルの事務所は落書きや嫌がらせに直面し、国営メディアもグループを「非愛国者」と呼び非難した。

スターリンの大粛清は世界で最も悪名高い出来事のひとつとして記録されているが、ウラジーミル・プーチン大統領はナチスとの戦いで一定の成果を上げたスターリンと旧ソ連の歴史を称賛している。

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