◎欧州はロシアに1日4億ドルものガス料金を支払っている。
ロシアは27日、ポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を停止し、他の欧州諸国に対しても同様の措置を取ると圧力をかけた。
欧州の指導者から「脅迫」と非難されたこの決定は、ウクライナに対する西側の兵器供与に対抗する措置のひとつとされ、経済戦争のエスカレートを示唆している。
EUの主要国はロシアの天然ガスに大きく依存している。一方、エネルギー大国であるロシアも天然ガスの販売で戦費を稼いでいるため、その供給量を減らせば国の経済に影響が出ることは避けられないと思われる。
ポーランドはウクライナに兵器を送る主要窓口になっており、今週、戦車を供与すると発表した。また同国はロシア国営ガスプロムが供給停止を通知する数時間前に、オリガルヒやその他企業への追加制裁を発表している。
ブルガリアは昨年秋に発足した新政権の下、ロシアとの古い関係を断ち切り、対ロシア制裁を加速させている。同国は黒海沿岸に新設したNATO前線基地に西側の戦闘機を配備している。
また両国は年末までにロシア産天然ガスの使用を停止する予定だった。
それでも、今回のガスプロム社の決定とロシアの警告はEUに心配の種をまき散らした。
欧州最大のロシアガス消費国であるドイツとイタリアはその依存度を下げる取り組みを進めている。
欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は27日、ロシアの脅迫は想定済みと一蹴した。「ロシアは私たちを分断させたいと考えているようですが、またしても失敗しました。欧州におけるロシアの化石燃料ブームは終焉を迎えつつあります」
ガスプロム社は今回の供給停止について、「ルーブル建てを拒否したため」と説明している。
ロシア政府は、ルーブルでの支払い(原油含む)を拒否した国は同様の措置に直面する可能性があると警告している。
ほとんどの欧州諸国はプーチン大統領のルーブル建て要求を拒否している。ギリシャはガスプロムへの支払いを5月25日に控えており、政府の対応に注目が集まっている。
ポーランドのモラヴィエツキ首相は27日の議会演説で、「ガス遮断の目的は、ポーランドのウクライナ支援、ポーランドとウクライナの関係を断ち切ることだ」と述べ、ウクライナへの支援を継続すると誓った。
ブルガリアのペトコフ首相は遮断を恐喝と呼び、「屈しない」と約束した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ロシアは天然ガスを兵器化し、欧州全体に照準を合わせた」と述べた。
ウクライナ南東部に形成された約480kmの長い戦線では戦闘が続いている。
ロシアは欧米がウクライナに提供した兵器をミサイルで破壊したと主張した。ハルキウの住宅街ではロケット弾攻撃で1人が死亡、少なくとも2人が負傷したとされる。
AP通信は米高官のコメントを引用し、「ロシアは東部ドンバスの一部地域の村や小さな町を占領するなど、小さな利益を上げつつ、ゆっくり前進している」と報じた。
ポーランドは国内で消費する天然ガスの約45%をロシアから購入しているが、電源の多くは石炭に依存しており、遮断への備えは万全と伝えられている。
ノルウェーに拠点を置くエネルギーコンサルタント会社Rystad Energyによると、ポーランドの天然ガス貯蔵量は十分で、まもなく2つの新たなパイプラインを稼動させる予定だという。
ブルガリアはガスの90%以上をロシアに依存しているが、アゼルバイジャン産を増やす手続きを進めており、ギリシャに通じる新たなパイプラインは今年後半に接続を終える予定である。
ブルガリアの首都ソフィアに住む女性はAP通信の取材に対し、「選択を迫られた場合、私は自由と尊厳を選びます」と語った。「ガス不足など、ウクライナの人々が受けている苦痛な苦難に比べれば取るに足りません」
欧州はロシアに1日4億ドルものガス料金を支払っており、これを完全に遮断すれば、プーチン大統領は戦費を失うことになる。
ロシアはインドや中国に石油を売りさばいているが、天然ガスの大量供給に必要なパイプラインとタンカーの輸送能力は限られている。
フォン・デア・ライエン委員長は、「この決定はロシアを傷つける」と述べた。