SHARE:

ロシアとベラルーシが軍事演習開始、西側警戒

22年2月にロシアがウクライナへ全面侵攻を開始して以降、ロシアとベラルーシの関係はかつてないほど緊密化している。
2021年11月12日/ベラルーシ、グロドノ地域の訓練場上空、ロシア軍とベラルーシ軍の落下傘部隊(Belarusian Defense Ministry Press Service/AP通信)

ロシアとベラルーシが12日、合同軍事演習を開始した。

「ザパド2025(西2025)」と名付けられたこの演習はベラルーシとロシア領内で実施され、16日まで続く。

両国は緊密な防衛関係を誇示するとともに、隣国ウクライナで3年半続く戦争を戦うロシアの軍事力を示すことを目的としている。

この演習はベラルーシと国境を接するウクライナやNATO加盟国のラトビア、リトアニア、ポーランドでも懸念を引き起こしている。

ベラルーシ国防省は演習に約1万3000人の兵士が参加すると発表していた。しかし5月、国防省は参加兵力をほぼ半減させ、主要な演習を国内のより奥地で行うと表明した。

ロシア国防省は12日、演習の一部がロシア領内およびバルト海、バレンツ海で行われると発表した。

22年2月にロシアがウクライナへ全面侵攻を開始して以降、ロシアとベラルーシの関係はかつてないほど緊密化している。両国はもともと「同盟国家条約」を基盤に軍事・経済面で結び付きを強めてきたが、戦争の長期化と国際的孤立の深まりによって、その依存関係は質的に変化した。

まず軍事面では、ベラルーシは侵攻初期からロシア軍に領土を提供し、北部からの進撃拠点として重要な役割を果たした。ロシアはベラルーシ国内に部隊を駐留させ、共同訓練や防空網の統合を進めており、実質的に両軍は一体化しつつある。2023年以降はロシアの戦術核兵器がベラルーシに配備され、ルカシェンコ政権は「安全保障の保証」として歓迎する姿勢を示した。これにより、ベラルーシは欧州の安全保障地図の中でロシアの「前線基地」としての性格を強めている。

経済面では、西側諸国が制裁を強化するなかで、ベラルーシはロシア市場への依存をさらに深めた。肥料やエネルギー製品の輸出ルートが制限される中、ロシアは代替市場や物流ルートの提供で支援し、逆にベラルーシ経済を自らの経済圏に組み込む動きを加速させた。統合経済空間の制度整備も進み、関税や規制の統一が図られている。

政治面では、ルカシェンコ政権は2020年の大統領選挙をめぐる抗議運動で西側との関係を断絶して以来、完全にロシアに依存する体制となった。戦争をめぐっては当初「参戦回避」の立場を強調していたが、次第にロシア寄りの発言が目立つようになり、国際舞台でもモスクワの立場を代弁する役割を担っている。もっとも、ベラルーシ国民の多くは直接的な戦争関与に否定的であり、ルカシェンコ自身も国内の不満を抑えるため、ロシア軍の兵員派遣要請には慎重な姿勢を崩していない。

総じて言えば、侵攻後のロシアとベラルーシの関係は「対等な同盟」というよりも、ロシアの軍事的・経済的影響下にベラルーシが取り込まれていく形に近い。ルカシェンコ政権は体制維持のためにロシアへの従属を選びつつも、自国の主権を完全に失わないよう微妙な均衡を模索している状況にある。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします