◎ハンガリーはロシアの化石燃料に大きく依存しており、EUの対ロシア制裁がエネルギー部門に拡大することを恐れている。
ハンガリーのオルバーン首相は26日、ウクライナへの軍事支援をあらためて拒否し、同国は中立であると宣言した。
オルバーン首相は4月3日に選挙を控えており、対ロシア制裁やウクライナへの軍事支援に慎重な姿勢を示している。ハンガリーは現在、EU加盟国の中で唯一、ウクライナへの兵器提供を認めていない。
オルバーン首相は声明の中で、ウクライナへの軍事支援はハンガリーを戦争に巻き込むことになると述べ、自国の平和と安全を守ることが何より大切と強調した。
ハンガリーはロシアの化石燃料に大きく依存しており、EUの対ロシア制裁がエネルギー部門に拡大することを恐れている。
オルバーン首相はSNSユーザーに、「ハンガリーはロシアの味方ですか?」と質問を受け、「ハンガリーはハンガリーの味方だ」と答えた。
ハンガリーの保守派はオルバーン首相の中立宣言をおおむね支持したように見えるが、EUの指導者とゼレンスキー大統領の怒りを買うことになった。
ゼレンスキー大統領は25日のEUサミットのビデオ演説でオルバーン首相に直接訴えた。「正直に申し上げたい。どちら側につくかは自分で決めなければなりません...」
ゼレンスキー大統領はハンガリーの首都ブダペストが20世紀の戦争で惨禍を経験したことを思い起こし、ナチスとハンガリーのファシストによって処刑されたハンガリー系ユダヤ人に敬意を表した。
「ヴィクトル(オルバーン首相)、マリウポリで何が起きているか知っているか?...あの靴を見てください。そうすれば、大量虐殺がいかに不条理であるか理解できるでしょう。それが今のロシアなのです...」
ドナウ川沿いにはファシストに処刑されたハンガリー系ユダヤ人に敬意を表す靴の記念碑が建立されている。
オルバーン首相はEUの対ロシア制裁にほとんど賛成しているが、ゼレンスキー大統領はロシアに圧力をかける最も有効な手段のひとつと考えられているエネルギー禁輸に反対し、ウクライナに唯一軍事支援を提供していないハンガリーを非難した。
「制裁を科すかどうか躊躇しているのか?武器を渡すか渡さないか迷っているのか?そして、ロシアと貿易をするかしないか躊躇しているのか?決断する時が来た。我々はあなたを信じ、あなたの支援を必要としている」
しかし、オルバーン首相はゼレンスキー大統領の感情的な訴えを却下し、SNSに投稿したビデオの中で、「ウクライナの要求はハンガリーの国益に反する」と述べた。
ハンガリーは天然ガスの85%、原油の60%以上をロシアに依存している。
オルバーン首相はロシアとの天然ガスや原子力の長期契約を守ることが国の利益になると強調した。この方針は中欧諸国のポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーで形成されるヴィシェグラード・グループの関係を脅かしている。
EUはハンガリーとポーランドの民主主義の後退と権威主義を非難してきた。
しかし、ハンガリーの主要同盟国であるポーランドは何世紀にもわたるソビエトの支配により、モスクワに強い不信感を抱いている。ポーランドはプーチン大統領を厳しく非難し、ウクライナ難民を200万人以上受け入れ、ウクライナに兵器を送る最前線基地になった。
オルバーン首相が同様の行動を取らないことで両国の関係は悪化しつつある。
ポーランドの与党党首でオルバーン首相の盟友であるカジンスキー議員は25日に放送された公共ラジオのインタビューの中で、ロシアに対するオルバーン首相の姿勢に不快感を示した。「幸せかと聞かれれば、そうではないです。私たちは選挙後、ハンガリーがどうなるか注目しています。しかし、今、私たちは幸せではありません」
チェコの国防相は、来週ハンガリーで行われるヴィシェグラード・グループ国防相会議への出席を見送るとツイートしている。