ロシア外相「新STARTの核兵器制限を順守する用意ある」
新STARTは2月5日に失効し、米露両国の核戦力に対する法的な制限が50年以上ぶりに消滅したが、ロシア側は「制限のモラトリアム(事実上の遵守)を継続する」と表明した。
とプーチン露大統領(AP通信).jpg)
ロシア政府は11日、米国との間で適用されてきた核軍縮条約「新START(新戦略兵器削減条約)」の核兵器制限を、米側が同様に順守する限りは引き続き守る意向を示した。新STARTは2月5日に失効し、米露両国の核戦力に対する法的な制限が50年以上ぶりに消滅したが、ロシア側は「制限のモラトリアム(事実上の遵守)を継続する」と表明した。
ロシアのラブロフ(Sergey Lavrov)外相は11日、首都モスクワの連邦議会で、プーチン(Vladimir Putin)大統領が昨年、米国が同じ枠組みで核兵器数の上限を維持するのであれば、当該条約の制限を1年間自主的に維持する用意があると表明していたと説明した。米側はこの提案に正式な応答を示していないが、ラブロフ氏は「米国がこれらの制限を破らない限り、我々も遵守を続ける」と強調した。
新STARTは2010年に発効し、当初は2021年までの有効期間であったが、双方の合意により5年延長されていた。条約は米露双方の配備中の戦略核弾頭を最大1550発、配備済みの大陸間弾道ミサイル・潜水艦発射弾道ミサイル・戦略爆撃機を合わせて700基までと制限する内容であり、その履行は条約に基づく査察や通知などの検証措置によって確認されてきた。しかし現地査察はコロナ流行の影響で2020年に停止し、ロシアは2023年に査察参加を一時停止したままだった。
条約失効後に核兵器制限が完全に解除されたことは、これまで米露が世界の核兵器の大部分を抑制してきた仕組みを実質的に終わらせるものとして国際社会に衝撃を与えている。国連など国際機関は失効によって核軍拡競争が激化する懸念を表明し、核拡散防止条約(NPT)体制や国際的な戦略安定が脆弱化するとの警告を出している。
トランプ(Donald Trump)大統領は新STARTの延長を望まず、「新しく、改良された、現代的な枠組み」を構築する意向を示してきた。トランプ政権は中国を含めた包括的な核軍縮協定の可能性を模索しているが、中国は現段階で参加を拒否している。
ラブロフ氏は米露両国の協力の意思が確認されれば新たな合意に向けて積極的に交渉を進める考えを示した。最近アラブ首長国連邦(UAE)アブダビで行われた米露交渉では、旧条約の制限を最低でも数カ月間維持する非公式な合意の可能性について議論があったとの報道もあるが、ロシア大統領府はそのような非公式延長は想像しにくいと述べている。
ロシアの条件付きの遵守表明は核軍縮が正式な条約枠組みによってではなく、両国の信頼と政策判断に基づく事実上の合意に依存する新たな段階へと移行しつつあることを示している。米露双方がどのような戦略的調整を図るかは今後の国際安全保障の焦点となる見通しである。
