◎プーチン大統領は13日、首都モスクワの東約450kmに位置するニジニノヴゴロド地域にある訓練場で行われた演習を視察した。
2021年9月13日/ロシア西部の軍事施設、関係諸国との合同軍事演習を視察するウラジーミル・プーチン大統領(Sergei Savostyanov/Sputnik/Kremlin/Pool/AP通信)

9月13日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は同盟国のベラルーシを含む関係諸国との合同軍事演習を視察した。

Zapad(ロシア語で「西」を意味する)と呼ばれる合同軍事演習は北大西洋条約機構(NATO)との戦争を想定している。実施頻度は4年に1回。今回の規模は冷戦以来最大になると伝えられており、ロシア政府は少なくとも兵士20万人が参加すると明らかにした。ただし、ほとんどの軍事アナリストは、実際の規模は5万~10万人と見積もっている。

Zapadの主要な演習は先週始まり、ロシア西部とベラルーシの軍事サイトには兵士数万人と戦車、戦闘機、ヘリ、軍艦などが集結した。

プーチン大統領は13日、首都モスクワの東約450kmに位置するニジニノヴゴロド地域にある訓練場で行われた演習を視察した。国営メディアによると、演習には機関銃とグレネードランチャーを搭載した2台のロボット戦闘車両も投入されたという。

今回のZapadにはアルメニア、インド、カザフスタン、キルギスタン、モンゴルの軍隊も参加した。

一方、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の暴挙に悩まされているポーランド、ラトビア、リトアニア、エストニアの外相は13日の共同声明で、「ロシアはベラルーシと西側の緊張が高まっているにもかかわらず大規模な合同軍事演習を主催した」と懸念を表明した。

これに対しモスクワのドミトリー・ペスコフ報道官は、「今回のZapadは過去の軍事演習と何ら変わらず、軍は4年に1度実施するという規則に則り、関係諸国と訓練を行った」と懸念を払拭した。

プーチン大統領とルカシェンコ大統領は演習の初日に会談し、両国の経済を発展させるための新しい取り組みと、「2つの国、1つの経済」というスローガンを発表した。

プーチン大統領はロシアとベラルーシを統合するという目標を達成するためにルカシェンコ大統領を支援していると考えられている。ルカシェンコ大統領は西側との緊張が悪化する以前は、プーチン大統領の政策を非難していた。

ベラルーシ当局は隣国リトアニア、ポーランド、ラトビアに中東とアフリカの移民を送り込み、EUの不安定化狙っていると信じられているが、ルカシェンコ大統領はこの主張を却下している。

EU当局はロシアがベラルーシを支援することで、移民の送り込みがさらに加速する可能性があると懸念している。

ルカシェンコ大統領は昨年の大統領選挙後に発生した大規模な抗議デモを力でねじ伏せ、今年5月には独立系ジャーナリストを逮捕するために民間旅客機を強制着陸させ、8月の東京2020五輪でも代表選手の亡命騒動で物議を醸し、先月頃から独立系メディアに対する取り締まりを強化した。

移民問題は、西側諸国がルカシェンコ大統領の暴挙に対する制裁を強化した直後に発生した。

主要メディアによると、今回のZapadは「西洋人」と名付けられた架空の敵の攻撃に対する防御作戦を想定していたという。

作戦のシナリオは、ベラルーシが3つの架空の国(リトアニア、ポーランド、スカンジナビアを想定している)から攻撃を受け、ロシア軍はベラルーシ軍の支援に入ると想定されていた。

ロイター通信は、「今回のZapadのシナリオは、西側の支援を受けるEU諸国がベラルーシの不安定化を図るために攻め込んできたように見える」と報じた。

軍事演習は重要なトレーニングのひとつだが、Zapadはプーチン大統領の権威を高めるだけのものと見なされている。アメリカの元国務次官補であるスティーブン・ガンヤード氏は、「ロシアの軍事力を示すキャンペーンは主にロシア国民を意識している」と指摘した。

ロシアでは17日から議会選挙が行われる予定である。13日の劇的なクライマックスはプーチン大統領の権威を高めると同時に、与党統一ロシアの選挙応援も兼ねているように見えた。

一方、NATOは先日、ロシア政府は訓練に関与した兵士の数を正しく公表しなかったと非難した。1990年のウィーン文書に基づき、ロシアは兵士13,000人以上が参加する演習を実施する場合、欧州安全保障協力機構(OSCE)のオブザーバーを招待するよう義務付けられている。

しかし、ロシアは推定20万人が参加すると公式声明で発表したにもかかわらず、13,000人未満の個々の部隊が各地で訓練を行っていると主張し、OSCEのオブザーバーを招待しなかった。

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