◎憲法裁の前例のない決定により、大統領選はやり直しが確定した。
ルーマニアの憲法裁判所は6日、先月実施された大統領選第1回投票の結果を無効と判断し、親ロシア派の極右ジョルジェスク(Calin Georgescu)氏の決選投票進出に待ったをかけた。
ヨハニス(Klaus Iohannis)大統領は今週、ロシアがジョルジェスク氏を宣伝するために組織的なオンラインキャンペーンを行ったという疑惑の証拠を公開していた。
ジョルジェスク氏は過去にロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領を「国を愛する男」と絶賛し、ウクライナを「敵対国家」と呼んだことがある。
またジョルジェスク氏は1930~40年代にかけてのルーマニアのファシストやナショナリスト指導者たちを国民的英雄と評して物議を醸したこともある。
憲法裁の前例のない決定により、大統領選はやり直しが確定した。
ジョルジェスク氏は憲法裁の決定を「クーデター」と呼び、「民主主義への攻撃である」と非難した。2位の中道右派ラスコニ(Elena Lasconi)氏も怒りを表明した。
ヨハニス氏は憲法裁の決定を歓迎。「ロシアがティックトックやテレグラムなどのSNSを利用して、組織的にジョルジェスク氏を宣伝するために数千のソーシャルメディア・アカウントを立ち上げていた」と改めて指摘した。
憲法裁は今月2日に第1回投票の結果を「有効」と判断していた。
憲法裁は無効の理由について、「選挙過程の公正性と合法性を確保するため」と説明。詳細は後日公表するとしている。
また憲法裁はジョルジェスク氏を名指しすることなく、「第1回投票の候補13人のうち1人がソーシャルメディア上で優遇措置を不当に受け、投票結果を歪めた」と指摘した。
選挙管理委員会は12月8日に予定していた決選投票に向け、海外で951の投票所を開設していたが、中止せざるを得なくなった。
親欧米派でNATOを敬愛するヨハニス氏は大統領選が一からやり直されるまで大統領職に留まると表明した。
12月1日の議会選では親欧米政党が最多得票を獲得したが、極右民族主義者も得票を伸ばした。ヨハニス氏は新政権が樹立されれば、新たな大統領選の投票日も決まるだろうと述べた。
ヨハニス氏は4日、情報機関、外国情報局、特別通信局、内務省の情報ファイルを公開した。
ヨハニス氏は6日に放送された声明の中で、「各機関が行った大統領選の調査結果に深い懸念を抱いている」と述べた。「調査の結果、我が国とは全く関係のない、それどころか、我が国と反する特定の国の影響を強く受け、大統領選の結果が歪められたことが明らかになりました。これは由々しき事態です...」
憲法裁は判決の中で、人工知能(AI)を含むデジタル技術の違法な使用や、未申告の選挙資金が使用されたと指摘している。また、ある候補がソーシャルメディア・プラットフォームで「優遇措置」を受け、その結果、有権者の意思表示が歪められたとしている。