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ルーマニア議会、内閣不信任決議案を否決、混乱続く

ボロジャン首相は、財政赤字削減やEUからの回復・レジリエンス資金を受け取るための条件として複数の改革を進めている。
2025年12月14日/ルーマニア、首都ブカレスト、政府与党に抗議するデモ(ロイター通信)

ルーマニア議会は15日、連立与党の不信任決議案を反対多数で否決した。

野党は主に政府の改革、とりわけ司法・年金制度改革を非難し、決議案を提出したが、与党の反対多数で否決された。

野党による不信任決議案の提出はこの半年で6回目。中道右派・国民自由党(PNL)のボロジャン(Ilie Bolojan)首相は、財政赤字削減やEUからの回復・レジリエンス資金を受け取るための条件として複数の改革を進めている。

しかし、税制改革や歳出削減策を含むこれらの計画は党内外で強い反発を招き、与党内でも一致した対応が困難になっている。このため、2026年度予算案の成立は1月まで遅れる見通しとなっている。

最大会派の社会民主党は改革の条件として最低賃金の引き上げを要求しており、これが与党内での大きな争点となっている。社会民主党は当初、政府の存続に批判的な姿勢を示していたものの、15日の採決ではボロジャン氏を支持した。

今回の採決は司法・年金改革案が中心テーマとなった。政府は裁判官や検察官の退職年齢を現在の50歳から65歳に段階的に引き上げ、退職後の年金を最終給与の70%に制限する措置を盛り込んだ法案を再提出した。

これは国の財政負担を軽減する狙いがあるが、司法の独立性や専門職の待遇を損なうとの批判も根強い。法案の以前のバージョンは10月に憲法裁判所により違憲として差し戻されており、政府は修正後の法案で再チャレンジしている。

憲法裁は12月28日に同法案の合憲性を判断する予定であり、これが否定されれば与党連合の結束にも影響を及ぼす可能性がある。

こうした政治的混乱の中、ルーマニア国内では司法制度に対する不満が高まっている。数多くの市民が「司法の腐敗」や「不透明な運用」を批判する抗議活動を展開しており、首都ブカレストを中心に大規模なデモが続いている。批判の焦点は法の支配や透明性に関する制度の改善を求める声が中心となっている。

政府は今回不信任を退けたものの、内部分裂のリスクや改革への反発は依然として根強い。社会民主党をはじめとする与党各派は今後の政策実行に向けて内部調整を進めるとともに、EUとの関係維持に向けた方策を模索している。特に司法・年金改革や最低賃金問題といった重要政策を巡る調整が政権安定の鍵となる見込みである。

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