SHARE:

米イラン紛争がロシアの「追い風」に、原油価格急騰で収益改善

この価格高騰は欧米諸国やアジアの経済に打撃を与える一方で、ロシアにとっては、エネルギー輸出を国家予算に組み込む同国の財政を支える“追い風”となっている。
2026年2月4日/ウクライナ、首都キーウ、ロシア軍の攻撃を受けた火力発電所(AP通信)

中東でのイランをめぐる戦争が原油や天然ガスの供給に深刻な混乱を引き起こし、世界のエネルギー価格が急騰している。この価格高騰は欧米諸国やアジアの経済に打撃を与える一方で、ロシアにとっては、エネルギー輸出を国家予算に組み込む同国の財政を支える“追い風”となっている。ロシアはこの収益増を活用し、5年目に突入したウクライナ侵攻の費用負担に当てる可能性があるという見方が出ている。

AP通信によると、ロシア産原油の輸出価格は昨年12月には1バレル40ドル未満だったが、米イスラエル・イラン紛争勃発後の不安やホルムズ海峡を通る石油輸送のほぼ全面的な停止により、現在は62ドルまで上昇している。世界的な基準となるブレント原油価格は4日時点で80ドルを超え、ロシア産原油は依然として割安ながらも、同国財務省が2026年予算で想定した59ドルの基準を上回る水準となった。原油や天然ガスの税収はロシア連邦予算の最大3割を占めており、価格上昇が財政収入を押し上げる要因となっている。

このようなエネルギー市場の変動は、ロシア経済にとって大きな好機となっている。ロシアはこの数カ月、石油・ガス収入が落ち込み、国家予算に大きな穴が開くなど厳しい財政状況が続いていた。ロシア財務省が発表した統計では、1月の石油・ガス税収は史上最低水準となり、1月単月の赤字も過去最大となった。しかしエネルギー価格の上昇により、この状況が緩和されつつあると分析されている。

専門家はイラン戦争で中東を中心とする供給網が混乱する中、ロシア産エネルギーの重要性が相対的に高まっていると指摘する。EUの一部加盟国やアジアの大口消費国であるインドや中国は、供給確保のためロシアからの輸入を増やすインセンティブが強まっているという見方だ。これによりロシアはエネルギー輸出を拡大しやすい状況にあるとされる。

一方で、この価格急騰や供給網の混乱が世界経済にもたらす悪影響は甚大である。原油価格の高騰は消費者物価や輸送コストの上昇を通じてインフレを刺激し、各国の経済成長を抑制する要因となる可能性がある。また、天然ガス価格の高騰は欧州で再びエネルギー危機への懸念を呼び起こし、EUが進めてきたロシア依存からの脱却計画にも影響を与えかねないという懸念も出ている。

長期的にホルムズ海峡の物流障害が続くようであれば、原油価格はさらに上昇する可能性があり、欧州経済に深刻な打撃を与えるとの予測もある。また、ロシアがこの状況を背景にエネルギー供給量を拡大する動きを強めれば、EU内でロシア産燃料の輸入制限を見直す声が高まるとの見方も出ている。これにより、ウクライナ支援をめぐる欧州の結束にも新たな圧力がかかる可能性がある。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします