◎スターリングラード攻防戦では両軍合わせて100万人以上が戦死したと推定されている。
ロシアのプーチン（Vladimir Putin）大統領は2日、南部ボルゴグラード（旧スターリングラード）で開かれたスターリングラード攻防戦から80年を記念する行事で演説し、ウクライナ侵攻を第2次世界大戦中の対ナチス戦になぞらえ、核兵器を使用する可能性があると示唆した。
プーチン氏はドイツがウクライナに主力戦車「レオパルト2」の供与を決めたことについて、「歴史は繰り返す」と述べた。
「信じられないことですが、事実です。我々は再びドイツのレオパルド戦車に脅かされています」
ドイツを含む欧州各国がレオパルト2の供与を決め、米国は新たなウクライナ支援として長距離ミサイルの供与を発表する予定だ。
プーチン氏は演説の中で、「通常兵器を超える手段を行使する可能性がある」と示唆した。
「戦場でロシアを打ち負かすことを望む人々は、ロシアとの現代の戦争が以前のそれとは大きく異なることを理解していません。我々は彼らの国境に戦車を送り込むつもりはありませんが、対応する手段は持っています。誰もがこれを理解しなければなりません」
ロシア大統領府のペスコフ（Dmitry Peskov）報道官は2日、記者団に対し、「西側諸国が新たな兵器を提供すれば、ロシアは潜在能力を行使する」と述べた。
プーチン氏は対ナチス戦の象徴であるスターリングラード攻防戦の勝利を記念する式典で戦死した旧ソ連兵の墓に花輪を手向け、ウクライナ侵攻でも「西側のネオナチ」に勝利すると誓った。
スターリングラード攻防戦では両軍合わせて100万人以上が戦死したと推定されている。
ボルゴグラードは今回の式典に合わせて地名を一時的にスターリングラードに改名し、今週初めには旧ソ連の指導者であるスターリン（Joseph Stalin）の新しい胸像が公開された。
スターリンは1932～33年にかけてウクライナで大飢饉（ホロドモール）を組織的に引き起こしたとして非難されている。
この大飢饉では500万人が餓死したと推定されている。ブルガリア議会は今週、ホロドモールを大量虐殺に認定した。
プーチン氏は侵攻を「ウクライナのナチスからウクライナ人を解放する戦い」と評し、正当化してきた。
プーチン氏は今回の演説でもナチスに言及し、ゼレンスキー政権と西側の同盟国を批判した。
「残念ながら、ナチズムのイデオロギーが、再び我が国の安全保障に脅威を与えています。我々は何度も何度も、西側集団の侵略を撃退しなければなりません」
ロシア軍がドイツの戦車レオパルト2の脅威に直面していることは事実である。西側の専門家はレオパルト2や英国の戦車「チャレンジャー2」が「ひどく疲弊したロシア軍」に大打撃を与える可能性があると指摘している。
ドイツ政府はレオパルト14両の供与を決めた。米国の世界最強と名高い戦車「エイブラムス」の供与を決め、さらに追加軍事支援として21億7000億ドル相当の兵器供与を準備している。現地メディアによると、この支援は3日に発表され、長距離ミサイルが含まれるという。
ボルゴグラードの通りには市民数千人が集まり、軍事パレードを見学した。
戦闘機が頭上で轟音を立てる中、最新式の戦車と第2次世界大戦時代の戦車がパレードに参加。装甲車両の一部にはウクライナ侵攻のシンボルとなった「Z」の文字が描かれていた。
一方、ウクライナのゼレンスキー（Volodymyr Zelensky）大統領は2日、首都キーウでEUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン（Ursula von der Leyen）委員長らと会談した。
フォンデアライエン氏のウクライナ訪問は4度目。3日にはウクライナとEUの首脳会談が予定されている。
ゼレンスキー氏は演説の中で、「ロシアはウクライナを支援した西側に復讐をする準備をしている」と語った。「ロシアは戦力を集中させており、ウクライナだけでなく民主国家であり欧州と世界に復讐するつもりです」
フォンデアライエン氏はウクライナへの支援継続を約束し、第10弾の対ロシア制裁を準備していると明らかにした。
ゼレンスキー氏は米国の朝食会「ナショナル・プレイヤー・ブレックファスト（National Prayer Breakfast）」にもオンラインで参加し、バイデン（Joe Biden）大統領の支援に謝意を示したうえで、ロシアに勝利するという目標を改めて強調した。
