◎プーチン大統領は30日に開催されたオンライン投資フォーラムの中で、ロシアはNATO軍の敵対的な行動を心配していると述べた。
2021年11月30日/ロシア、クレムリンの大統領室、ウラジーミル・プーチン大統領(Mikhail Metzel/ Sputnik/Kremlin/Pool/AP通信)

11月30日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ近郊におけるNATO(北大西洋条約機構)の兵力を増強を「レッドライン」と呼び、それを実行すればロシア軍は強く反応するだろうと警告した。

NATOはウクライナ東部周辺で進行中の危機に強い懸念を示している。ロシア軍は「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を含むウクライナの領土および周辺地域に兵士約90,000人を追加配備したと伝えられている。

プーチン大統領は30日に開催されたオンライン投資フォーラムの中で、ロシアはNATO軍の敵対的な行動を心配していると述べた。

またプーチン大統領は、NATOはウクライナの領土に対モスクワ用ミサイルを追加配備する可能性があると懸念を表明した。「ミサイルの追加配備はレッドラインを踏み越えることを意味します。ロシアはグローバルコミュニティの常識と責任がそのような事態に発展することを防ぐと信じています...」

ロシアは2014年にウクライナのクリミア半島を併合し、クリミアを「自国の領土」と宣言したが、国際社会はこれを認めていない。

その後、クリミアの北東部に位置するドネツクとルハンシクの分離主義者はウクライナからの独立を宣言した。ロシアはドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立を承認したが、国際社会とウクライナは分離主義者をテロリストと見なしている。

プーチン大統領は核弾頭を搭載できる極超音速ミサイル「アバンガルド」と「キンザール」、新型戦略兵器のひとつであるレーザー兵器の「ペレスヴェート」はNATOの脅威が増大しているため「開発せざるを得なかった」と主張した。

アバンガルドは音速の27倍(約33,000km/h)で飛行し、敵国のミサイル迎撃システムをかわして標的を破壊できると考えられている。アバンガルドは既存のソ連製大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載され、2019年12月に実践配備された。

ミグ31K爆撃機が装備する空中発射型極超音速ミサイル キンザールの航行距離は2,000km、速度は音速の10倍と伝えられている。2019年に実践配備されたレーバー兵器ペレスヴェートの情報はほとんど明らかにされていない。

プーチン大統領はフォーラムの参加者に、「ロシアは兵器開発を望んでいない」と語った。「私たちは兵器開発も武力衝突も戦争も望んでいません。しかし、私たちは敵国の脅威に備える必要があります。極超音速ミサイルはそのひとつです。私たちはそれを開発せざるを得ませんでした...」

プーチン大統領は「NATOのミサイルは5分でモスクワに到達する」と述べたうえで、「ロシアの極超音速ミサイルも同程度の時間で西側を捉える」と警告した。

ロシアの国営メディアによると、ロシア軍は音速の9倍で飛行する極超音速ミサイル「ジルコン」のテストを29日に行ったという。

一方、NATOの外相は30日の声明で、ウクライナを不安定化させる試みは「大きな代償を伴う」とロシアをけん制した。

ロシア、ウクライナ、分離主義者は2015年の停戦協定ミンスクⅡでドンバス戦争の停戦に合意したが、ロシア軍は今年初めにウクライナ東部近郊に数万人規模の兵を派遣し、NATOに圧力をかけた。部隊の大半は4月に撤退したが、主要な兵器類は東部の軍事基地に配備されたと伝えられている。

プーチン大統領は、緊張を避けるためには当事者の権利を確立する協定が必要と主張した。「大切なことは軍を派遣することでも、戦争を行うことでもありません。世界の主要なプレーヤーは民主国家として国家の権利と安全保障を確立するために話し合うべきです。真摯に努力しましょう。恐れる必要はありません...」

またプーチン大統領はNATO軍の演習について、「核兵器を搭載できる米国の戦略爆撃機がロシアの国境近くを飛行した」と述べた。「核弾頭を搭載できる爆撃機はロシアの国境から20kmほどの地点を飛行しました。私たちはどうすべきですか?」

プーチン大統領とジョー・バイデン大統領は6月のジュネーブ首脳会談で、両国の戦略的安定とサイバーセキュリティに関する対話を開始することに合意した。

プーチン大統領は30日の声明で、ロシアと米国の専門家チームはサイバーセキュリティに関する議論を歓迎すると述べ、何かしらの交渉が始まると示唆した。

しかし、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は記者団に、現時点で夏のサミットに関連する協議や交渉は予定されていないと述べた。「米国は今もロシア当局と高いレベルで連絡を取り合っています...」

プーチン大統領の任期は2020年の憲法改正国民投票でリセットされ、2036年まで権力を維持できるようになった。

プーチン大統領はフォーラムの参加者から中国の核開発について質問を受け、「ロシアは心配していない」と答えた。「ロシアと中国の緊密な関係は世界の平和と安定を維持するうえで欠かせません...」

中国の核弾頭保有数は今後10年間で倍増すると予想されている。共産党は核開発に関する情報を一切公表していない。

2021年6月16日/スイス、ジュネーブのヴィラ・ラ・グランジ、ジョー・バイデン大統領とウラジーミル・プーチン大統領(ミハイル・メッツェル/AP通信/Pool)
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