◎プーチン大統領のマラソン記者会見は4時間近く続いた。
12月23日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は米国とNATO(北大西洋条約機構)に提示した安全保障条約草案を擁護したうえで、「ロシアの我慢は限界に達しており、西側は即座に要求に応えなければならない」と警告した。
プーチン大統領はモスクワで開催された年次記者会見の中で、来月ジュネーブで予定されている米国との協議を歓迎したが、ロシアは文書による即時の保証を求めていると警告した。「ロシアはNATOの東方拡大は受け入れられないと西側に知らせました。彼らは応えなければなりません...」
ロシアは先週、米国とNATOに厳しい安全保障条約の草案を提出した。
ロシアは草案の中で、「ロシアの領土を攻撃できる範囲にNATO軍を配備しないこと」や、「ロシアの領土近くでのNATO軍の軍事活動禁止」などを要求している。またロシアは、「ウクライナのNATO加盟を認めない法的保証」を米国とNATOに求めたが、この要求はすでに拒否されている。
さらにロシアは、NATOに加盟した旧ソ連邦構成国がロシアへの脅威と見なされる地域に軍や兵器を配備しないことを要求している。これらを認めると、NATOはロシアと国境を接するバルト海諸国やポーランドに兵を派遣できなくなり、さらにジョージアとウクライナのNATO加盟も諦めなければならない。
プーチン大統領は会見の中で、「ロシアは米国の近くにミサイルを配備していますか?」と怒りながら言った。「いいえ。ミサイルを持ってきたのは米国です。米国は私たちの家の近くにミサイルを配備しようとしています。私たちは自宅の近くにミサイルを配備するなと要求しているだけです。私は過度な要求をしていますか?」
ウクライナ当局と米国の諜報機関によると、ウクライナ東部に配備されたロシア軍の兵士は10万人以上にのぼるという。ジョー・バイデン大統領はウクライナが侵略された場合、「これまでに見たことのない厳しい制裁を科す」と警告している。
ロシアはウクライナへの侵攻を否定しているが、NATO軍の東方拡大を「レッドライン」と呼び、最悪の事態もあり得ると警告した。
プーチン大統領は「ウクライナに侵攻しないと世界に約束できるか?」という質問に対し、「私に保証を提供しなければならないのはあなただ!」と怒りながら答えた。「米国は何十年もダラダラと協議を続けながら東方に勢力を拡大しました。ロシアがカナダやメキシコの国境付近にミサイルを配備したら、あなたはどうしますか?」
米国とNATOの同盟国は、プーチン大統領が望む文書による保証は与えないと述べている。AP通信などによると、米国当局はジュネーブ会談に先立ち、EU諸国と協議を続けているという。
プーチン大統領はNATOと旧ソ連のゴルバチョフ大統領が結んだとされる口頭協定に言及し、「米国はロシアを露骨に騙した」と非難した。「米国は東方に拡大しないと言いながら拡大しました。米国はすべての人に平等を保証すると約束しましたが、ロシアの安全は保証しないようです。私は時々、あなたたちとは異なる世界に住んでいるように思えます」
東欧のポーランド、ハンガリー、チェコ共和国は1999年にNATOに加盟し、2004年にはブルガリア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、旧ソ連構成国のエストニア、ラトビア、リトアニアがそれに続いた。その後、アルバニア、クロアチア、モンテネグロ、北マケドニアも加盟し、NATO加盟国は30カ国になった。
プーチン大統領は、「脅しているのはロシアではない」と断言した。「ロシアは米国やイギリスの国境付近で活動していますか?いいえ。近づいてきたのはあなたたちです。そして今、あなたたちはNATOはウクライナの見方だ、ウクライナはNATOに加盟すると言っています。あなたたちはそこに基地を設置し、ミサイルを配備するつもりですか?」
「ロシアは国境付近に新しいミサイル、新しい兵器が配備されたと心配しながら生活すべきですか?いいえ。私たちは地域の安全保障、国の安全保障について協議しなければなりません」
またプーチン大統領は、ウクライナ軍が「ロシアの同盟国」に対する攻撃を開始しようとしているように見えると主張した。「ウクライナは第3の軍事作戦を準備し、ロシアに干渉するなと警告しているように見えます...」
ロシアは2014年にウクライナ南東部のクリミア半島を併合し、クリミアを「自国の領土」と宣言したが、国際社会はこれを認めていない。
その後、クリミアの北東部に位置するドネツクとルハンシクの分離主義者はウクライナからの独立を宣言した。ロシアは「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認したが、西側とウクライナは分離主義者をテロリストと見なしている。
ウクライナ外務省のオレグ・ニコレンコ報道官は23日、ウクライナ軍が軍事作戦を準備しているという主張は誤りであると強調した。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官も23日の会見で、「ウクライナの国境付近で侵略の準備をしている国はロシアだけであり、プーチン大統領の演説は関係国に対する挑発に過ぎない」と非難した。
イギリスのリズ・トラス外相は23日、「ロシアの侵略は大きな誤りであり、同盟国の協調制裁は極めて強力なものになるだろう」と警告した。
ウクライナ東部とクリミア周辺に展開されたロシア軍は、そこで大規模な軍事演習を行う予定と伝えられている。
ドイツはロシア軍の動きに深刻な懸念を表明し、危機を和らげるための外交を強く求めた。
バルト海のリトアニア、ラトビア、エストニアもロシア軍の大規模展開を恐れており、リトアニアのギタナス・ナウセダ大統領は先日、地域の緊張を「ソビエト崩壊以来最悪」と表現した。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は今週、ロシアとの協議を望んでいると述べたが、ウクライナのNATO加盟はNATOとウクライナ次第であり、ロシアの影響は一切受けないと断言した。
プーチン大統領のマラソン記者会見は4時間近く続き、国内の様々な問題の質問も受け付けた。
プーチン大統領は、ロシアが独立系メディアや活動家を「外国のエージェント」と呼び、非合法化しているという批判を却下し、最大の政敵である野党党首のアレクセイ・ナワルニー氏の暗殺未遂にロシア当局が関与したという主張も却下した。
またプーチン大統領はドイツとロシアを結ぶ新たなガスパイプライン「ノルドストリーム2」を称賛したうえで、ロシアがEUに対する天然ガス供給を制限し、エネルギー価格の高騰を煽っているという主張を嘲笑した。
プーチン大統領は、来年2月に開幕する北京2022冬季五輪の外交ボイコットを非難し、「米国は中国の成長を封じ込めるために西側の仲間と一生懸命努力している」と笑いながら言った。