◎ウクライナ侵攻はまもなく開戦から10カ月を迎える。
ロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領は19日、ロシア領内の安全保障を強化する取り組みの一環として、国境警備と社会の統制を強化し、「裏切り者・スパイ・妨害者」を根絶するよう関係機関に命じた。
国営タス通信によると、プーチン氏は治安当局に対し、ウクライナの併合地を含むロシア領の国境を守り、社会の統制を強化し、外国勢力のスパイや裏切り者から国家を守る必要な施策を講じるよう命じたという。
タス通信はプーチン氏の発言を引用し、「軍事情報などを取り扱う防諜機関には最大限の落ち着きと体制強化が求められている」と報じた。
またプーチン氏は「外国勢力の特殊部隊の行動を厳しく抑制し、裏切り者、スパイ、破壊工作員を迅速に特定せよ」と命じた。
ウクライナの併合4州(ドネツク、ルハンシク、ヘルソン、ザポリージャ)の国境警備も強化される。
国営テレビはプーチン氏の発言を引用し、「連邦保安局(FSB)を通じて国境警備を強化せよ」と報じた。「国境を確実に守らなければならない。国境を侵す試みは我々が使えるあらゆる手段を駆使して阻止し、機動隊や特殊部隊を含むあらゆる部隊は迅速かつ効果的に対処する必要がある」
タカ派はこの決定を歓迎しつつ、「生物化学兵器や核兵器の準備を進める必要がある」と主張した。
国営テレビはチェチェン共和国のカディロフ(Ramzan Kadyrov)首長の発言を引用し、「ウクライナ国境の敵兵を速やかに殲滅しなければならない」と報じている。
プーチン氏はウクライナ併合4州で生活する市民の安全を確保するために国境警備の強化を指示。大規模集会を規制し、住民の安全を確保するよう特殊部隊に命じた。
またプーチン氏は、「最優先すべきは市民の安全であり、市民の権利と自由の保護に必要なあらゆる兵器を使用できる」と述べ、「近代的な設備と兵器を提供する」と約束した。
ウクライナ侵攻はまもなく開戦から10カ月を迎える。
ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は19日、ラトビアで開催された英・北欧諸国参加の合同遠征軍(JEF)会合でオンライン演説し、さらなる兵器の供与を要請した。
またゼレンスキー氏はロシアの侵略を阻止するためには同盟国の支援が欠かせないと強調した。
ゼレンスキー氏は18日遅くに公開したビデオ演説で、16日のロシア軍によるエネルギーインフラへの攻撃以来、900万人への電力供給を再開させることができたと報告。電気と水インフラの復旧作業が順調に進んでいると説明した。
一方、ロシアのラブロフ(Sergei Lavrov)外相は19日、「和平交渉が始まらないのはウクライナのせいであり、国民への配慮に欠ける」と非難した。
ラブロフ氏はベラルーシの首都ミンスクで行われたテレビインタビューでゼレンスキー氏の発言を「ヒステリック」と非難し、「戦況を全く理解していない指導者のせいで、多くの国民が犠牲になっている」と主張した。
またラブロフ氏はロシアを「最大の脅威」と決めつける西側がすべてを破壊したと非難した。
国連のグテレス(Antonio Guterres)事務総長は19日、年末の記者会見で「ロシアとウクライナの和平交渉が近い将来実現するとは思っておらず、当面は軍事的対立が続く」という見方を示し、遺憾の意を表明した。
グテレス氏は「当面の間は効果的な和平交渉が行われる可能性は低く、楽観視もしていない」と述べた。