◎ロシア正教会はユリウス暦の1月7日にクリスマスを祝う。
2023年1月5日/ウクライナ、東部ドネツク州マリウポリ(Alexei Alexandrov/AP通信)

ロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領は5日、ロシア正教会のクリスマスに合わせて、ウクライナで6日から36時間の停戦を一方的に宣言した。

プーチン氏はウクライナに停戦に応じるよう求めたが、ウクライナ政府はこれを一蹴した。

ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は5日遅くに公開したビデオ演説で、「ロシア軍は停戦を利用して態勢を整えるつもりだ」と糾弾した。

ロシア大統領府は停戦命令について、プーチン氏がロシア正教会トップの意向を反映したと示唆している。

最高指導者キリル総主教(Patriarch Kirill)はウクライナの信者が礼拝に出席できるよう停戦を呼び掛けていた。

ロシア正教会はユリウス暦の1月7日にクリスマスを祝う。

ロシア大統領府は声明で、「プーチン大統領はキリル総主教の訴えを考慮し、国防相に対し、ウクライナの全部隊に36時間の停戦体制を敷くよう指示した」と述べている。

しかし、ゼレンスキー氏は一方的な停戦宣言を非難し、「ロシアは停戦を隠れ蓑にして、東部ドンバスにおけるウクライナ軍の前進を止め、態勢を整えようとしている」と指摘した。

ウクライナのクレバ(Dmitro Kuleba)外相も提案を却下し、ロシアはゼレンスキー氏の和平提案を何度も拒否したと述べた。

またクレバ氏はロシア軍による12月24日と大晦日の空爆を引き合いに出し、「テロリスト国家は宗教的な祝日であろうとなかろうと、敵対行為を止めない」と指摘した。

バイデン(Joe Biden)米大統領はロシアの提案について、「興味深い」と述べるも、「プーチン氏は酸素(兵器や兵糧など)を確保しようとしているだけ」という見方を示した。

プーチン氏の停戦宣言は「ウクライナを悪者にする」というロシア政府の方針を反映しているようにみえる。ウクライナ軍が宣言を無視して攻撃を仕掛ければ、ロシアはウクライナを「平和を望まないナチ国家」と糾弾するだろう。

ウクライナ大統領府は5日、ロシア軍がウクライナ領内にとどまる限り停戦はあり得ず、戦いは続くと改めて表明した。

また大統領府は「一方的な停戦などあり得ず、つまらない策略には騙されない」と非難した。「善意のジェスチャー、プロパガンダ、人間のふりをしてウクライナ軍の圧力を和らげようとする策略には騙されません...」

ウクライナのSNSユーザーも停戦宣言を却下し、「勝手に休んでろ」「クリスマス・イブにミサイルを撃ち込む鬼畜の言うことなど信用できない」などと言ったコメントが寄せられた。

ロシア軍は今週、東部ドネツク州マキイフカに対するウクライナ軍の攻撃で大勢の死傷者が出たことを認め、死者数を89人と報告した。ウクライナ軍は数百人が死傷したと推計している。

兵士の遺族、一部の政治家、コメンテーターはマキイフカで多くの兵士が死亡したことに怒りを表明し、軍幹部を「無能」と糾弾した。

一方、米国のバイデン氏とドイツのショルツ(Olaf Scholz)首相は5日、ウクライナへの軍事支援として、歩兵戦闘車を供与することで合意した。米国は「M2ブラッドレー」歩兵戦闘車、ドイツは「マルダー」を供与する。

仏大統領府も同日、ウクライナと仏製装輪装甲車「AMX10RC」の供与について協議すると発表した。

西側は戦車などを攻撃できる戦闘車の供与に消極的だったが、ウクライナ政府の要請を受け、より強力な兵器の供与を検討しているようだ。

2023年1月5日/ウクライナ、東部ドネツク州マリウポリのアパート(Alexei Alexandrov/AP通信)
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