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ポーランド大統領がEU防衛融資法案への署名拒否、政府との対立激化

問題となっているのは、EUが打ち出した防衛強化計画「SAFE(Security Action for Europe)」である。
ポーランドのナブロツキ大統領(Getty Images/AFP通信)

ポーランドのナブロツキ(Karol Nawrocki)大統領は10日、EUの防衛向け融資制度を利用するための国内法への署名を拒否した。法案は約440億ユーロの低利融資を活用して軍事投資を拡大する内容で、議会を通過していたが、ナブロツキ氏は「EUへの依存を強めるべきではない」として反対姿勢を示した。これにより、親EU路線のトゥスク(Donald Tusk)首相との対立が改めて浮き彫りとなった。

問題となっているのは、EUが打ち出した防衛強化計画「SAFE(Security Action for Europe)」である。総額1500億ユーロ規模の融資枠を設け、加盟国の防衛能力向上や欧州の軍需産業の強化を目指すもので、ロシアによるウクライナ侵攻以降に高まった欧州の安全保障不安への対応策と位置付けられている。ポーランドはこの制度の最大の受益国となる見込みで、約440億ユーロの融資を利用する計画を立てていた。

トゥスク政権はこの資金を使って139の防衛関連プロジェクトを進める方針で、そのうち30件はロシアと接する東部国境の防衛強化に充てる計画だ。また資金の約8割を国内防衛産業に投入することで、軍備の拡充と同時に国内産業の育成にもつなげたい考えを示していた。

しかしナブロツキ氏は、EU融資の利用は政治的条件を伴い、ポーランドの政策決定に影響を及ぼす恐れがあると懸念している。ナブロツキ氏は代替案として、国内資金を活用した防衛投資法案を提案し、EUからの借り入れに頼らない形で軍備拡張を進めるべきだと主張した。具体的には中央銀行の利益など国内資源を活用する仕組みが検討されている。

ナブロツキ氏を支持する野党・法と正義(PiS)もEU計画に批判的だ。同党のカチンスキ(Jaroslaw Kaczynski)党首は10日、「ポーランドの独立に値段はない」と述べ、EU主導の防衛政策はドイツなどの影響力を強める恐れがあると主張した。EU融資では欧州企業からの装備調達が優先され、米国製兵器の購入が制限される可能性があるとの懸念も指摘されている。

一方、政府側はEU資金について、低金利で、防衛力の迅速な強化に不可欠だと強調する。トゥスク氏はナブロツキ氏がこれを阻止すれば軍備増強の機会を逃す可能性があると批判しつつ、仮に法案が拒否された場合でも別の方法で資金確保を図る「代替案」を準備していると述べている。

ポーランドは2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、防衛費を急速に拡大してきた。東欧の最前線に位置する同国は、欧州でも特に軍備増強に積極的な国の一つである。今回の問題は、EUとの協力を重視する政府と、主権や対米関係を重視する大統領との政治的対立を象徴するものとなっている。

大統領府によると、ナブロツキ氏は3月20日までに法案への署名を正式に拒否するかどうか判断する予定。EU資金の活用をめぐる政治的駆け引きは今後も続く見通しで、ポーランドの防衛政策と対欧州関係に影響を及ぼす可能性がある。

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