◎専門家によると、不景気、インフレ、中絶規制が出生率を押し下げていることは明白だという。
2021年10月26日/ポーランド、首都ワルシャワ、与党「法と正義」のカチンスキ党首(Czarek Sokolowski/AP通信)

ポーランドの与党「法と正義」のカチンスキ(Jaroslaw Kaczynski)党首は同国の合計特殊出生率が低いのは若い女性のアルコールの飲み過ぎが一因であると主張している。

女性の権利団体とフェミニストはこの主張を却下し、カチンスキ氏の自宅前でデモを行うと宣言した。

野党議員、活動家、著名人も73歳の独身男であるカチンスキ氏を非難した

しかし、ポーランドで最も強力な政治家であるカチンスキ氏は、「若い女性はアルコールを飲み過ぎだ」と繰り返し主張している。「アルコールの過剰摂取はあなたの卵巣に悪影響を与えます...」

専門家によると、不景気、インフレ、中絶規制が出生率を押し下げていることは明白だという。

ポーランドの消費者物価指数(CPI)は前年から18%近く上昇し、若者の結婚と出産をさらに難しくしている。

女性の権利団体はカチンスキ氏を「老害」と呼び、フェミニストたちは首都ワルシャワにある同氏の自宅前で抗議デモを決行するとSNSに発信した。

ある団体はフェイスブックにこう投稿している。「ある老害は女性が子供を産まないのは酒のせいだ、ポーランドが地獄だからではない、と言っている」

この団体は中絶が事実上禁じられていること、性教育や体外受精が制限されていること、インフレ、住宅不足、不景気、不景気、不景気が出生率を押し下げているのは「猿でも分かる」と述べている。

カチンスキ氏は5日、与党の政治集会で「生まれてくる子どもの数があまりにも少ない」と懸念を表明した。「時には厳しい指摘も必要です。例えば、25歳以下の女性が同世代の男と同じように酒を飲むような状況が続けば、子供は生まれない!」

またカチンスキ氏は女性は男性の数倍アルコール依存症になりやすいと警告した。「平均的な男は20年アルコールを飲み続けると依存症になりますが、女性はたった2年です!」

「私は女性の権利を心から支持しますが、女性が男性のように振る舞ったり、男性が女性のふりをすることは支持しません!」

多くのSNSユーザーが「アルコールは受胎に役立つ」というジョークでカチンスキ氏を嘲笑している。

ポーランドは欧州で最も厳しい中絶制限を課している国のひとつであり、中絶を認められるのは生命に係わるケースのみである。最高裁は胎児に重大な問題がある場合や、妊婦の生命に係わるような事態でない限り、中絶は認めないと裁定している。

現行法は女性の生命に危険が及ぶと判断される場合は中絶を認めるとしているが、最高裁の判決以降、妊婦が死亡するケースが増加している。

人権団体によると、多くの医師が法的な影響を恐れて、中絶手術を拒否しているという。

ポーランドの女性1人当たりの出生率は1960年の3人から2003年には1.2人にまで低下した。2003年以降はやや持ち直し、カチンスキ政権が2015年に子ども1人につき毎月500ズロチ(約1万6000円)の現金給付を導入したことで勢いを増した。

しかし、政府の統計によると、出生率は再び低下し始めたようだ。

カチンスキ氏は先月、この現金給付プログラムが意図したとおりに機能していないことを認めた。統計によると、2021年の出生率は女性1人当たり1.32人であった。

先進国の合計特殊出生率は人口置換水準である女性1人当たり2.1人を下回り、人口減少が進行している国もある。国連によると、61カ国の人口が2050年までに少なくとも1%減少するという。

乾杯する女性たち(Getty Images)
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