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外国人労働者300人を売買、犯罪ネットワーク摘発、11人逮捕 スペイン

被害者の多くは観光ビザやシェンゲン圏加盟国用の短期ビザを使ってスペインに入国。その後、複数の農場に偽装労働者として送り込まれたという。
2022年11月30日/スペイン、首都マドリード(Paul White/AP通信)

スペイン警察が4日、外国人労働者約300人を密入国させ、不法に農場で働かせていた違法就労ネットワークを摘発し、11人を逮捕、さらに2人を捜査対象としたと明らかにした。

それによると、被害者は主にネパール出身で、合計322人が保護され、そのうち294人はスペインでの就労・居住に必要な適正な書類を所持していなかった。

当局による捜査後、警察はこのネットワークの「解体」に成功したと発表した。被害者の多くは観光ビザやシェンゲン圏加盟国用の短期ビザを使ってスペインに入国。その後、複数の農場に偽装労働者として送り込まれたという。

被害者たちは中部および東部の農場で働かされており、不法かつ強制に近い条件下に置かれていた。

ある被害者グループは換気の悪い過密な部屋に詰め込まれ、マットレスが敷きつめられただけの暗い室内で共同生活を強いられていた。トイレや衛生設備へのアクセスも限られ、警察はその居住環境を「完全に尊厳を著しく損なう、非人道的なもの」だと断じた。

さらに、被害者たちは毎日バンで農場に送られ、その中には安全基準を満たしていない車両もあったという。移送中のネパール人が交通事故で死亡した例も報告されている。

加えて、多くの労働者が数か月にわたって賃金を受け取れず、食事も最低限のものしか与えられなかったとされる。事実上の強制労働、搾取であり、国際的に人権問題として批判されるべき事態だ。

今回の摘発はスペイン当局による農業分野を通じた不法労働・人身取引の取り締まりの一環であり、背後にある密入国ルートおよび違法就労あっせんの構造に光を当てた。そして、被害者の多くがネパール出身という点は、貧困や経済的困窮に伴う脆弱な立場が、犯罪組織による搾取につながるという国際的な構図を浮き彫りにする。

今後、スペイン政府および関係機関はこのような密入国・不法労働の根絶に向けた監視と支援体制を強化することが求められている。また、被害者の社会復帰支援、適正な労働環境の確保、違法労働仲介を防ぐ国際協力の枠組みが重要となるだろう。

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