SHARE:

フランス・パリのワイン見本市で「ノンアル飲料」需要急増

この背景には、特に若年層を中心に健康志向や身体意識の高まりがあるとされる。
2026年2月10日/フランス、パリ、ワイン・パリ2026フェアの会場(AP通信)

フランス・パリで開催された国際的なワイン・スピリッツ見本市「ワイン・パリ2026(Wine Paris 2026)」でゼロ・低アルコール飲料の需要が急増していることが浮き彫りになった。この動きはフランス国内にとどまらず、米国や欧州など主要市場でも消費者の嗜好変化を反映している。

この展示会には赤、白、ロゼ、スパークリングといった伝統的ワインに加え、欧州、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど各国からアルコール分を抑えたワインやノンアルコールワインの製品が多数出品された。これらの製品は、従来のアルコール製品と同じ会場で紹介され、業界関係者や来場者の関心を集めた。出展者の多くは「No alcohol, no regrets, no consequences(アルコールなし、後悔なし、影響なし)」「drink different(違う飲み方を)」などのスローガンを掲げ、変わりつつある消費者のライフスタイルに応える姿勢を示した。

フランス人のジャスティン・ボビン(Justin Bobin)さんはこの傾向を自身の体験として語る。ムスリムであり自身はアルコールを飲まないボビンさんは、「フランスではアルコールを飲まないと楽しめないという固定観念が根強い」と話す一方で、ノンアルコール飲料はアルコールを飲む人とも一緒に交流できる手段だと評価する。またボビンさんは今回の展示会で多様なノンアルコール製品を試飲し、フランスのワイン産地ブルゴーニュ地方で自ら経営するデリカテッセンで販売する商品選びの参考にしたという。

この背景には、特に若年層を中心に健康志向や身体意識の高まりがあるとされる。アルコール摂取が身体への負担や翌日の体調不良につながるという認識が広がり、少量あるいはノンアルコールの選択肢を好む消費者が増えているという。また、フランス国内でのアルコール消費量は過去半世紀で大幅に減少し、ワインを食事とともに毎回楽しむ文化が薄れつつあるとの指摘もある。

この流れは業界にも影響を及ぼしている。オランダの大手飲料メーカーであるハイネケンは昨年のビール売上が減少したことを受けて、世界で最大6000人の人員削減を計画しているが、一方でゼロ/低アルコール飲料の販売は18市場で2桁成長を記録していると報じられている。こうした業績傾向はアルコール依存型製品からのシフトを物語るものとして注目されている。

オーストリアのノンアルコールワイン生産者であるカティヤ・ベルネッガー(Katja Bernegger)さんも、こうした消費者の変化は一過性のブームではなく長期的なトレンドだと話す。彼女自身、妊娠中にアルコールを断つ必要があった際、味わいを楽しめる選択肢が限られていた経験から、より洗練されたノンアルコール製品の開発を進めたという。ベルネッガーさんは「単にオレンジジュースやコーラを飲むだけでは、外食や社交の場で半分しか楽しめない」と述べ、質の高いノンアルコール飲料の必要性を強調した。

こうした取り組みは、消費者の多様な価値観に応えると同時に、アルコール文化の変容も促している。伝統的なワイン文化を持つフランスでさえ、健康や持続可能性を重視する消費行動が広がる中で、ゼロ・低アルコールの選択肢が一段と重要な位置を占めつつある。この傾向は今後、国際的な飲料市場全体に影響を与える可能性がある。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします