◎ロシア連邦保安庁(FSB)がアレクセイ・ナワルニー氏の毒殺未遂事件に関わっている。
◎実行犯のひとり、コンスタンティン・クドリャフツェフは、ナワルニー氏の下着にノヴィチョクが塗布されたと示唆した。
12月21日、ロシアの野党指導者、アレクセイ・ナワルニー氏は声明で、「自分を毒殺しようとした諜報員を騙し、事件の情報を聞き出した」と語った。
ナワルニー氏は諜報員との電話の音声をYoutubeに投稿した。会話中、ナワルニー氏はロシア政府の高官を装っている。
この音声は、独立した諜報集団、ベリングキャットによって録音された。
ベリングキャットは先週、ナワルニー氏を追跡し続けたロシア連邦保安庁(FSB)の諜報員を特定し、その男が同氏に神経ガス「ノヴィチョク」を塗布したと発表した。
一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ベリングキャット、インサイダー、CNNニュース、デア・シュピーゲルが一斉に報じたFSB諜報員による暗殺未遂事件について、「アメリカの諜報機関が考え出した戯言」と却下した。
ベリングキャットの報告によると、実行犯のひとりはFSBの生化学アカデミーで訓練を受け、省内の生物兵器研究所に勤めていたコンスタンティン・クドリャフツェフという男だという。
ナワルニー氏は公開した音声の中で「マキシム・ウスティノフ」という偽名を使い、クドリャフツェフに電話をかけている。
クドリャフツェフは安全な回線かどうかを繰り返し確認したのち、ナワルニー氏の質問に答えた。
クドリャフツェフは自分の役目について、「警察に保護されたナワルニーの服からノヴィチョクの痕跡を消すことが仕事だった」と示唆し、2度病院に足を運んだと述べた。
また、「仲間がナワルニーの下着にノヴィチョクを塗布した」と示唆し、痕跡を消すよう命じられたという。
コンスタンティン・クドリャフツェフ(音声):
「仲間たちはナワルニーのパンツの内側に神経ガスを塗布した。私は警察もしくは病院に保管されている証拠を処理するつもりだった」
「なぜ殺さなかったのか?」と尋ねられたクドリャフツェフは、「ナワルニーを乗せた飛行機が緊急着陸し、救急隊員がノヴィチョクを中和するアトロピンを投与したため、彼は生き延びたと信じている」と答えた。
クドリャフツェフは、「飛行機が緊急着陸しなければ、結果は全く違うものになっていただろう」と述べた。
ベリングキャットは公開した調査資料の中で、別のFSBの高官と話すことができたと報告している。
しかし、ベリングキャットはFSBのミハイル・エヴドキモフに、「クドリャフツェフからナワルニーの服を受け取ったか?」と質問したが、「安全な回線以外で話すことはできない」と質問を拒否されたという。
プーチン大統領は先週の声明の中で、「もし私が彼を毒殺したいと本気で思ったら、必ず成功させるだろう」と述べた。
ロシア産の猛毒、ノヴィチョクについて
・ソビエト連邦秘密プログラムで開発された神経ガス兵器。
・2018年、イギリス、ソールズベリーで元ロシアの二重エージェント、セルゲイ・シュクリバル氏を毒殺(未遂)する際に使用された。
・ノヴィチョクはロシア語で「新しい男の子」を意味する。
・バイナリー兵器(二種混合型化学兵器)の一種。
・パイナリー兵器は「VXガス」や「サリン」などの一般的な神経ガスとは異なり、アクティブ化するために2つの物質を組み合わせる。
・ロシアの科学者、ヴィル・ミルザヤノフ氏によると、ノヴィチョクは「フォリアント」と呼ばれるプログラムで開発されたという。
・威力はVXガスの5倍~8倍。(米スティムソン・センター)