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ベラルーシのノーベル平和賞受賞、獄中生活を語る

ビアリアツキー氏は2021年に反体制活動を理由に逮捕され、国際的に批判された裁判で有罪となり、10年の禁錮刑を言い渡されていた。同氏は服役中の2022年にノーベル平和賞を受賞した。
2025年12月14日/リトアニア、首都ビリニュス、ベラルーシのノーベル平和賞受賞者であるビアリアツキー氏(AP通信)

ベラルーシのノーベル平和賞受賞者であるビアリアツキー(Ales Bialiatski)氏は14日、リトアニアの首都ビリニュスでAP通信の取材に応じ、ベラルーシの刑務所での過酷な収監生活について語った。

ビアリアツキー氏は2021年に反体制活動を理由に逮捕され、国際的に批判された裁判で有罪となり、10年の禁錮刑を言い渡されていた。同氏は服役中の2022年にノーベル平和賞を受賞した。

ビアリアツキー氏の釈放は12月13日に行われたベラルーシ政府による大規模な政治犯釈放の一環であり、123人の政治犯と共に解放された。今回の釈放は米国がベラルーシに対する制裁の一部を解除したことに伴う外交的取引の一部とみられている。

ビアリアツキー氏はAP通信のインタビューで、1600日以上に及んだ刑務所生活について、「氷水から暖かい部屋に飛び出したようだ」と表現し、自由を取り戻した感慨を語った。解放直前の朝まで過密状態の獄中にいたという。

収監中の環境について、ビアリアツキー氏は医療ケアの不足や隔離期間の存在など、劣悪な条件が続いたことを明らかにした。歯の治療すら抜歯しか選択肢がなかったと述べ、基本的な医療が十分でなかった実態を示唆している。また、情報や外界とのコミュニケーションの制限が厳しく、孤立した状態が続いたという。

一連の逮捕と収監はビアリアツキー氏が設立した人権団体「ビアスナ」の活動と深く結びついている。ビアスナは政治犯支援や権利侵害の記録を行う組織であり、長年にわたりベラルーシ政権の弾圧に対して告発を続けてきた。ビアリアツキー氏は拘束前も歴史的な民主化運動の中心人物であったが、特に2020年に大統領選挙を巡る抗議活動が激化した後、政権による弾圧が強まった。

ビアリアツキー氏はAPに、「ベラルーシには依然として1000人以上の政治囚が拘束されている」と強調。「政治的理由で投獄されている人々が選んだ自由のために今も闘っている。私はその声だ」と述べ、今後も人権擁護活動を継続する決意を示した。

今回の釈放には国際社会も注目しており、ベラルーシ政府の動きは欧米諸国との関係改善を意図した外交戦略の一環とみられている。ベラルーシのルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領は長年にわたり欧米から人権侵害を理由に制裁を受けてきたが、今回の措置により一部経済制裁の解除に繋がった。

ただし、運動家や国際人権団体は今回の釈放が恒久的な人権改善を意味するものではないと指摘している。釈放された囚人の多くは国外に移送され、依然として国内には多数の政治犯が残されている。これを受けて、国際社会の間では引き続きベラルーシへの圧力が必要だとの声が強まっている。

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