◎2020年、税務当局は約11,000人の市民が「二重国籍を持っているという理由」だけで追加精査の対象になったと認めた。
◎さらに、対象となった市民は「書類の軽微な誤り」だけで詐欺師扱いされ、育児のために与えられた数万ユーロ(数百万円)を「誤って」返済するよう命じられた。
1月15日、オランダのルッテ内閣は何万もの市民を犯罪者扱いした福祉スキャンダルの責任を取り、総辞職した。
マルク・ルッテ首相は声明の中で、「ウィレム・アレクサンダー王に内閣総辞職を伝えた。私たちは影響を受けた数万人に対する補償を速やかに行ったうえで、コロナウイルスと戦い続ける」と述べた。
マルク・ルッテ首相:
「私たちはオランダの福祉システムの破綻に対する責任を負わなければならない。私は内閣総辞職以外に道はないと思った。先ほど王に解散する旨を伝えた」
「私たちは何の罪もない人々を犯罪者扱いし、生活を台無しにした」
声明後、ルッテ首相は自転車で宮殿に向かい、アレクサンダー王に正式に解散を報告した。
ルッテ首相は3月17日の総選挙まで暫定内閣を率いる。
2020年、税務当局は約11,000人の市民が「二重国籍を持っているという理由」だけで追加精査の対象になったと認めた。
さらに、対象となった市民は「書類の軽微な誤り」だけで詐欺師扱いされ、育児のために与えられた数万ユーロ(数百万円)を「誤って」返済するよう命じられた。
対象者は突然の返済命令に困惑し、経済的および心理的に追い詰められた。
3人の子供を持つ黒人のシングルマザーは地元メディアの取材に対し、「私たちは犯罪者扱いされた挙句、125,000ユーロ(約1,600万円)の返済を命じられました。私はお金を持っておらず、子供たちはご飯を食べずに寝ることもありました」と語った。
当局の自白は、オランダの中で差別が制度化され、権力者によって永続化されていると信じる者たちの怒りを引き起こした。
スキャンダルは2012年に始まり、政府のミスで数万ユーロの返済を命じられた市民の数は25,000人を超えると伝えられている。
ある母親は、約48,000ユーロ(600万円)の支払いに直面した。彼女は命令が誤りであることを説明しようとしたが、当局はその後、育児手当だけでなく他の給付も差し止めたという。
母親は家賃を滞納し、電気を止められ、政府から詐欺師と見なされた影響で仕事を失い、犯罪者の烙印を押され、再就職先も確保できず、生活は崩壊した。
地元メディアの取材に応じたナザン・アイディン氏は、「私は突然お金を請求された。ルッテは私と家族を詐欺師扱いした。私は今でも皆から詐欺師と呼ばれている」と述べた。
野党自由党のヘルト・ウィルダース議員は声明で、「総辞職は当然」と述べた。
ヘルト・ウィルダース議員:
「政府は彼らの生活を破壊し、中途半端な補償を発表した挙句、勝手に解散した。議会は先月、その報告を突然、不完全に知らされた」
オランダはコロナウイルスの感染拡大に直面しており、政府は少なくとも2月9日まで厳しいロックダウンを維持する予定である。また、変異種の感染が広まっており、より厳しい夜間外出禁止令を発出する検討も行われている。
1月14日、連立内閣時代に社会問題大臣を務めた野党労働党の議員が辞職した。
同じくスキャンダルに関与した現職のエリック・ウィーブス大臣も15日に議員辞職した。
野党は15日に開催された内閣議会の中で、「税務署の対応は法の基本原則に違反している」と厳しく非難した。
政府は対象者を補償する予算、5億ユーロを確保したという。また、福祉制度の改革を約束したうえで、影響を受けた市民に速やかに30,000ユーロ(約380万円)を支払い、補償制度を拡大すると発表した。
ルッテ首相は中道右派の4党連立政権を率いてきた。最新の世論調査によると、ルッテ首相のVVD党はウィルダース議員の自由党より支持を集めているという。
内閣総辞職を受け、VVD党と連立政権を組む民主66(D66)のシグリッド・カッグ議員は声明で、「政府は説明責任を負い、報告の内容と市民に対して行われた不正の責任を負うことが重要である」と述べた。
アレクサンドラ・ファン・ハッフェレン財務長官は、「スキャンダルに巻き込まれた家族と子供たちの将来を守らなければならない」と述べた。