◎トルコのエルドアン大統領はフィンランドとスウェーデンのNATO加盟に反対している。
NATO事務総長は19日、北欧2カ国のNATO加盟をめぐるトルコとの対立について、問題は解決され、フィンランドとスウェーデンの加盟申請は速やかに承認されると確信していると語った。
しかし、トルコのエルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は両国が問題に対処しない限り、加盟申請に反対すると圧力をかけている。
NATO加盟には現加盟30カ国の合意が必要。
エルドアン大統領は19日の祝日(青年とスポーツの日)を祝うビデオメッセージで次のように述べた。「私たちはフィンランドとスウェーデンのNATO加盟にノーと言い、決して振り返らず、この道を進み続けます...」
トルコは安全保障上の懸念からフィンランドとスウェーデンの加盟に反対している。
両国はトルコ政府がテロ組織に指定している「クルド労働者党(PKK)」を支援し、トルコへの武器輸出を制限している。
一方、NATOのストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長は19日、デンマークの首都コペンハーゲンを訪問した際、「フィンランドとスウェーデン両国のNATOファミリーへの加盟が迅速に批准されることを確信している」と語った。
ストルテンベルグ事務総長は記者団に、「我々はトルコが表明した懸念に対処している」と説明した。「重要な同盟国であるトルコが安全保障上の懸念を表明し、問題を提起した場合、それに対処する唯一の方法はもちろん、座って話し合うことです」
トルコに何かしらの圧力をかけると期待されている米国のバイデン(Joe Biden)大統領は19日、ホワイトハウスにフィンランドとスウェーデンの両首脳を招き、NATO加盟を完全に支持すると表明した。
米国とトルコの関係はトルコがロシアのミサイル防衛システム購入を決定したことでぎくしゃくしている。
フィンランドのニーニスト(Sauli Niinisto)大統領は、「トルコの懸念について前向きに議論する用意ができている」と語った。「トルコがNATO加盟国として私たちの安全保障にコミットするように、私たちもトルコの安全保障にコミットします。私たちはテロの脅威を真剣に受け止めています」
スウェーデンのアンデション(Magdalena Andersson)首相は、「トルコや他のNATO加盟国とあらゆる問題を解決するために連絡を取り合っている」と明らかにした。
両国は今週、NATO本部に加盟申請書を提出した。加盟協議の日程はまだ決まっていない。
バイデン大統領とストルテンベルグ事務総長はトルコに何かしらの条件を提示すると期待されている。
エルドアン大統領はPKKを含むクルド人武装勢力を支援する北欧諸国がNATOに加盟すれば、安全保障上の問題に発展しかねないと懸念している。オスマン帝国時代から続くトルコ人とクルド人の紛争は1980年代に本格化し、数万人が死亡したと考えられている。
ストルテンベルグ事務総長は「どちらが先に加盟できると思うか?」と問われ、「両国の加盟申請はひとつのプロセスとして扱っている(両国は同時に加盟する)」と答えた。
しかし、エルドアン大統領は18日、スウェーデンに「テロの中心地、テロの本拠地」という烙印を押した。
トルコ大統領府の報道官は18日、「スウェーデンの武器がPKKの手に渡っているという証拠がある」と述べ、「加盟候補国はテログループへの支援を断つ必要がある」と主張した。
AP通信はトルコ政府高官のコメントを引用し、「両国はテロ組織への支援を直ちに停止し、容疑者をトルコに引き渡し、トルコに対する武器輸出制限を解除する必要がある」と報じている。
スウェーデンとフィンランドを含む複数の欧州諸国は、2019年にトルコ軍がクルド人武装勢力の支配地域を一掃するとしてシリア北東部で越境作戦を行ったことを受け、トルコへの武器輸出を制限した。
一方、トルコ政府はシリアのクルド人民防衛部隊(YPG)がPKKとつながっているとみている。
YPGの戦闘員などで構成される「シリア民主軍」に対する米国の支援はイスラム国(ISIS)グループとの戦いを目的としているが、トルコを激怒させている。
またトルコは米国に亡命したイスラム教指導者ギュレン(Fethullah Gulen)師を支援するいくつかの欧州諸国を非難し、スウェーデンとフィンランドはギュレン師の信奉者を保護していると主張している。
トルコは2016年7月のクーデター未遂事件にギュレン師が関与したと主張しているが、ギュレン師はこれを否定している。