◎ナゴルノカラバフはアゼルの領土とみなされているが、1994年に終結した分離戦争以来、アルメニア政府の支援を受ける分離主義勢力の管理下に置かれ、住民の大半はアルメニア人で構成されていた。
ナゴルノカラバフ紛争(Getty Images)

アゼルバイジャン軍が係争地ナゴルノカラバフへの砲撃を開始した。現地メディアが19日に報じた。

これにより、アルメニアとアゼルによる本格な紛争が再燃するのではないかという懸念が一層高まった。

ナゴルノカラバフはアゼルの領土とみなされているが、1994年に終結した分離戦争以来、アルメニア政府の支援を受ける分離主義勢力の管理下に置かれ、住民の大半はアルメニア人で構成されていた。

2020年の紛争では両軍合わせて6000人以上が死亡、数千人が負傷したと報告されている。

両国は2020年11月、ロシアの仲介で停戦に合意した。アゼルは主要都市シュシャを含むナゴルノカラバフの大部分を奪還。アルメニア人は土地を追われた。

アゼル政府は昨年12月以来、アルメニアからナゴルノカラバフに通じる道路(通称ラチン回廊)を封鎖しており、アルメニア人が生活する一部地域への物資輸送が大幅に制限される事態となっている。

アルメニア政府はラチン回廊の封鎖を「大量虐殺に等しい暴挙」と非難し、ロシアに対応を求めている。

一方、アゼル政府は19日、ナゴルノカラバフへの砲撃を「対テロ作戦」と呼び、アルメニアの破壊工作員が仕掛けた地雷により、兵士2人と民間人4人が死亡したと明らかにした。

ロシアの平和維持軍はラチン回廊を含むナゴルノカラバフ全域の治安維持を任務としている。

しかし、アゼル政府はアルメニア人がラチン回廊を使ってナゴルノカラバフに武器を密輸し、許可を得ずに鉱物などを採掘していると主張している。

ラチン回廊封鎖により、ナゴルノカラバフで生活するアルメニア人は食料不足に陥り、市民約12万人が緊急の人道支援を必要としている。

数ヶ月にわたる衝突と交渉の末、赤十字国際委員会は今週、この地域に少量の小麦粉と医薬品を届けた。

ナゴルノカラバフを統治する反体制派は赤十字により支援を「アゼル政府が主導する併合作戦の一環」と呼び、拒否し続けていた。

この輸送により、最悪の事態(飢餓)は回避できるという観測が高まったものの、アゼル軍の砲撃でアルメニアとの戦争が再燃するリスクが急速に高まった。

アルメニアにはロシアの軍事基地が複数あり、旧ソ連圏の集団安全保障条約機構(CSTO)に参加するなど、ロシアと緊密な関係を構築してきた。

しかし、両国の関係はこの1年で急速に悪化。アルメニアは今年、自国領内でのCSTO演習を拒否し、米軍との合同軍事演習を行うなどして、ロシアを怒らせた。

さらにアルメニア政府はCSTO加盟国の中で唯一、ウクライナに人道支援を提供。ロシアの逆鱗に触れた。

ロシアのメドベージェフ(Dmitry Medvedev)安全保障会議副議長はアルメニアがロシアから距離を置こうとしていることに憤慨。アルメニアのパシニャン(Nikol Pashinyan)首相について、「どんな運命が待っていると思う?」とSNSに投稿した。

アルメニア国内では2020年の停戦協定に反対する声が高まっているように見える。反体制派はパシニャン氏を「ナゴルノカラバフを捨てた売国奴」と呼び、辞任を求めている。

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