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モルドバ首相「ロシアが議会選挙に介入」9月28日投開票

捜査当局は9月28日の議会選に先立ち、市民に対し、ロシア系ハッカーによるサイバー攻撃や偽情報拡散に警戒するよう呼びかけている。
モルドバのレチャン首相(右)とサンドゥ大統領(Getty Images/AFP通信)

モルドバのレチャン(Dorin Recean)首相は24日、ロシアが数億ユーロを投じてモルドバの議会選挙(一院制、定数101)に介入し、親ロシア政権を樹立して権力を掌握しようとしていると警告した。

捜査当局は9月28日の議会選に先立ち、市民に対し、ロシア系ハッカーによるサイバー攻撃や偽情報拡散に警戒するよう呼びかけている。

レチャン氏は閣議後の記者会見で、「モルドバは選挙運動。ロシア連邦も選挙運動中だ」と語った。

またレチャン氏は「我々は自国で運動しているのに対し、ロシアは自国ではなく我が国で不正な選挙運動を展開している」と批判した。

さらに、「ロシアはモルドバ国民の意志を侵害し、親ロシア派に権力を掌握させようとしている」と述べた。「これは普通の選挙戦ではありません。我が国に対する包囲戦です...」

レチャン氏はロシアがSNSなどを駆使して政府与党に関する偽情報を発信し、支持を減らそうとしていると指摘。地元メディアの世論調査によると、サンドゥ(Maia Sandu)大統領の与党「行動と連帯(PAS)」は過半数を割り込む可能性がある。

2022年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して以降、モルドバとロシアの関係は不安定な状況にある。モルドバは旧ソ連構成国であり、地政学的にはロシアとの歴史的・経済的結びつきが強い一方で、EUとの関係強化を模索する親欧米派が多数派を占め、ロシアとの関係は複雑である。ロシアのウクライナ侵攻は、モルドバにとって安全保障上の直接的脅威と隣接地域の不安定化を意味した。

侵攻開始直後から、モルドバ国内ではロシアの影響力を警戒する声が強まった。特に沿ドニエストル地域(トランスニストリア)はロシアが支援する親ロシア派自治地域であり、軍事的な緊張が増大した。沿ドニエストルにはロシア軍の駐留が続いており、ウクライナ侵攻を契機にロシアの軍事的圧力や情報操作が懸念され、モルドバ政府は防衛体制の強化を進めざるを得なかった。また、モルドバはエネルギー面でもロシアへの依存が高く、特にガス供給の面で圧力を受ける可能性があったため、EU諸国からのエネルギー支援を受けつつ、ロシアへの交渉を慎重に行った。

外交面では、モルドバは明確に中立や非武装を掲げる立場を維持しつつ、EUとの連携を深める方向に舵を切った。2022年6月にはEU加盟候補国としての地位を得て、ロシアに対する経済的・政治的自立の意志を示した。一方で、ロシアはモルドバを経済制裁の対象とするなど圧力を強め、モルドバ国内の親ロシア勢力との関係も緊張した。さらに、ロシアは沿ドニエストル地域を通じてモルドバ国内における政治的影響力を維持しようとしたため、国内政治の分断が進行した。

人道・経済面でも影響が現れた。ウクライナからの難民がモルドバに流入し、国内の社会・経済負担が増大したほか、ロシア制裁や物価上昇の影響も国内経済に波及した。これにより、モルドバ政府は国際支援を受けつつ、国内の安定確保に努める必要が生じた。

ロシアによるウクライナ侵攻はモルドバに対して安全保障、経済、外交の各面で圧力をかけ、ロシアとの関係を従来以上に複雑化させる結果となった。モルドバは欧州との関係強化を進める一方で、ロシアの影響力との微妙な均衡を保つという難しい外交課題に直面している。

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