モルドバ議会選挙、親EU派が過半数獲得へ、親ロシア派に勝利
2022年2月にロシアがウクライナへの全面的な侵攻を開始して以降、モルドバとロシアの関係は急速に悪化した。
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モルドバで28日に行われた議会選挙(一院制、定数101)の開票作業が続いている。
有権者はこの投票を「EUへの道」か、「ロシアに逆戻りするか」の地政学的選択と見なしている。
選挙期間中、海外の複数の投票所で爆弾騒ぎが起きたり、選挙・政府インフラへのサイバー攻撃、有権者による不正、違法な投票用紙の搬入など、数えきれない妨害工作が確認された。
警察は投票後に騒乱を引き起こす計画を立てたとして、3人を拘束したと報告している。
投票は現地時間午後9時に締め切られた。
選挙管理委員会によると、開票率95%時点で、サンドゥ(Maia Sandu)大統領の与党「行動と連帯(PAS)」の得票率は48%。親ロシア政党が25.6%となっている。他の政党の得票率は10%を下回っている。
現地メディアによると、PASは過半数確保が確実視されている。
選管は投票終了後の声明で、有権者総数の約51.9%に当たる159万人以上が投票したと報告。この中には海外の投票所で投票した26万4千人が含まれている。前回選挙(2021年)の投票率は48%強であった。
議員は全国単一選挙区に基づく比例代表制によって選出される。任期は4年。
選挙制度はドント方式による比例代表制が採用されており、有権者は政党リストに投票する。議席の配分には、政党に対する得票率に応じた比例配分が行われる。ただし、議席を獲得するためには政党ごとに一定の得票率(選挙のたびに変更されるが、通常は5%前後)を超える必要がある。
地元メディアの世論調査では、与党PASは過半数を割り込む可能性があった。
2022年2月にロシアがウクライナへの全面的な侵攻を開始して以降、モルドバとロシアの関係は急速に悪化した。モルドバは長年、親ロシア派と親欧州派が対立する中立的な立場を保とうとしてきたが、戦争の影響と国内政治の変化により、明確に親欧州路線を強めるようになった。
モルドバはウクライナと国境を接しており、ロシアの軍事行動による安全保障上の脅威を強く受けている。とりわけ、親ロシア分離主義勢力が実効支配する沿ドニエストル地域(沿ドニエストル共和国)は、モルドバ領内に存在する事実上の独立状態の地域であり、ロシア軍も駐留している。この地域が新たな火種となる可能性もあることから、政府は警戒を強めてきた。
モルドバ政府はロシアによるウクライナ侵攻を非難し、EUやNATOとの連携を強化する姿勢を鮮明にした。特に、親欧州派のサンドゥ氏とPAS主導の政権はEU加盟への意欲を公に表明し、2022年6月にはウクライナとともにEU加盟候補国の地位を正式に獲得した。
これに対して、ロシアはモルドバ政府の動きを厳しく批判し、経済的・政治的圧力を強めた。特に天然ガス供給をめぐる問題が深刻化し、ガスプロム社はモルドバへの供給を一時的に削減または停止するなど、エネルギーを通じた圧力を加えた。モルドバはエネルギー面でのロシア依存を減らすため、ルーマニアや他の欧州諸国とのエネルギー連携を加速させている。
また、モルドバ国内ではロシアによる政治的干渉や偽情報の拡散が深刻な問題とされている。2023年以降、サンドゥ氏はロシアの情報戦やクーデター計画への関与を警告し、いくつかの親ロシア勢力の活動を取り締まった。モルドバ政府は複数のロシア人外交官を国外追放するなど、外交面でも対ロ強硬姿勢を見せている。
さらに、モルドバ国内の親ロシア系野党や団体による反政府デモも活発化しており、政治的分断が深まっている。一方で、多くの国民はウクライナからの難民受け入れや西側との連携を支持しており、社会全体としては欧州志向が強まっている。