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モルドバ大統領、ロシアの「ハイブリッド戦争」を非難、議会選迫る

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、モルドバとロシアの関係は急速に悪化している。
2025年9月9日/フランス、東部ストラスブール、モルドバのサンドゥ大統領(AP通信)

モルドバのサンドゥ(Maia Sandu)大統領は9日、今月末の議会選挙(一院制、定数101)に影響を与えようとするロシアの試みにより、同国の民主主義が「時間との戦い」に直面していると警告した。

サンドゥ氏はフランス東部ストラスブールの欧州議会で演説。9月28日の議会選について、「モルドバ史上、最も重要な選挙になる」と語った。

またサンドゥ氏は「ロシアが偽情報、票の買収、政党への違法資金提供、その他無数の戦術を通じて、広範なハイブリッド戦争を展開し、投票を妨害し、EU加盟への道を阻もうとしている」と改めて強調した。

さらに、「ロシアの目的は明白だ。投票箱を通じてモルドバを掌握し、我々をウクライナに対する武器として利用し、EUへのハイブリッド攻撃の跳躍台に変えることだ」と述べた。

サンドゥ氏は「選挙結果がモルドバが安定した民主主義国家となるか、あるいはロシアによる不安定化工作がモルドバを欧州から引き離すかを決定するだろう」と述べ、「今日、我々はウクライナ全面侵攻以前に例を見ない規模の無制限なハイブリッド戦争に直面している」と付け加えた。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、モルドバとロシアの関係は急速に悪化している。

その背景にはいくつかの要因がある。第一に、モルドバは地理的にウクライナと国境を接し、また自国領内に親ロシア派が実効支配する「沿ドニエストル地域」を抱えているため、侵攻を自国の安全保障への直接的な脅威と見なしている。ロシア軍が沿ドニエストルを拠点にモルドバへの圧力を強める可能性が常に意識され、侵攻後には不安が一層高まった。

第二に、モルドバはEUや西側諸国との連携を加速させた。特に2022年にはEU加盟候補国に認定され、エネルギーや経済分野でロシア依存を減らそうとしたことが、モスクワの反発を招いた。

第三に、ロシアはモルドバに対しエネルギー供給を政治的圧力の手段として利用し、ガス価格の引き上げや供給制限で揺さぶりをかけた。これにより両国の対立は経済面でも顕在化した。さらに、モルドバ政府はロシアのプロパガンダや親露勢力の活動を制限し、国内での影響力を削ごうとしている。

こうした一連の動きはロシアにとって「勢力圏からの離脱」と映り、敵対的な関係を深める結果となった。つまり、ウクライナ侵攻はモルドバに安全保障上の危機感を強めさせ、西側への傾斜とロシア離れを加速させたことで、両国関係を決定的に悪化させたのである。

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