モルドバ当局、ロシアの「暴動」扇動計画疑惑で74人拘束
ロシアによるウクライナ侵攻が2022年2月に始まって以降、モルドバとロシアの関係は急速に緊張を増してきた。
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モルドバ当局は22日、全国で250件の家宅捜索を実施し、74人を拘束したと発表した。これは9月28日の議会選挙(一院制、定数101)を前に、大規模な「暴動」を扇動し国家を不安定化させるロシア支援計画の疑いに関する捜査の一環である。
警察によると、家宅捜索は100人以上を対象に複数地域で実施されたという。
警察の組織犯罪対策局は声明で、家宅捜索の結果、74人を拘束したと明らかにした。
また同局は「この計画は犯罪組織を通じてロシア連邦から依頼されていた」と説明した。
さらに、「容疑者の大半は組織的にセルビアに渡航し訓練を受けていた」と述べ、年齢層は19歳から45歳までと明らかにした。
サンドゥ(Maia Sandu)大統領は来週の議会選を「モルドバ史上、最も重要な選挙」と位置づけ、親ロシア派の野党がオンラインで偽情報を拡散していると非難してきた。
多くの有権者がこの選挙を「EU加盟に向けた道筋を継続するか、ロシアとの緊密な関係を選択するか」の分岐点と見なしている。
ロシアによるウクライナ侵攻が2022年2月に始まって以降、モルドバとロシアの関係は急速に緊張を増してきた。モルドバはウクライナ西隣の小国であり、旧ソ連の一員だった歴史を持つ。国内には親欧州派と親ロシア派が併存し、さらに沿ドニエストル地域という親ロシア武装勢力の支配下にある分離地域を抱えるため、侵攻後は地政学的に極めて不安定な立場に置かれた。
まず、モルドバ政府は侵攻を強く非難し、国際社会と歩調を合わせてロシアの行為を国際法違反と位置づけた。同時にEU加盟志向を一層鮮明にし、2022年6月には正式にEU加盟候補国として承認された。これはロシアからすれば影響圏の縮小を意味し、両国関係をさらに冷え込ませる結果となった。
エネルギー分野では、従来モルドバは天然ガスをほぼ全面的にロシアに依存していたが、侵攻以降ガス供給を巡る摩擦が頻発した。ロシア国営ガスプロムはしばしば供給削減や価格引き上げを通じて圧力をかけ、モルドバは深刻なエネルギー危機に直面した。これに対し政府はルーマニアやEUからの電力供給を受け、欧州との結びつきを強化する方向へと舵を切った。
さらに、沿ドニエストル地域をめぐる問題も再び浮上した。同地域にはロシア軍が「平和維持部隊」として駐留しており、侵攻後はモルドバ国内でロシアの介入拡大を警戒する声が高まった。2022年春には沿ドニエストル地域で爆発事件などの不安定要素が相次ぎ、モルドバ政府は中立政策を維持しつつも安全保障上のリスクを強調するようになった。
世論面でも親欧州志向が強まり、サンドゥ氏を中心とする親欧米政権はロシアの影響力排除に積極的な姿勢を見せている。一方、国内には親ロシア野党や経済的理由でロシアとの関係改善を望む層も存在し、内政の分断は依然として残る。
ウクライナ侵攻以降のモルドバとロシアの関係はエネルギー、領土問題、外交路線といった複数の要因で対立を深めている。モルドバは欧州との統合を加速させる一方、ロシアはガス供給や沿ドニエストルを通じて影響力を維持しようとしており、両国関係は冷戦的な緊張を帯び続けている。