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モルドバ議会選挙、ロシア干渉疑惑に揺れる有権者たち

2022年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して以降、モルドバとロシアの関係は急速に悪化した。
2025年9月28日/モルドバ、首都キシナウの投票所、サンドゥ大統領(AP通信)

モルドバで29日、議会選挙(一院制、定数101)が行われ、午後9時に投票が締め切られた。

有権者はこの投票を「EUへの道」か、「ロシアに逆戻りするか」の地政学的選択と見なしている。

選挙期間中、海外の複数の投票所で爆弾騒ぎが起きたり、選挙・政府インフラへのサイバー攻撃、有権者による不正、違法な投票用紙の搬入など、数えきれない妨害工作が確認された。

警察は投票後に騒乱を引き起こす計画を立てたとして、3人を拘束したと報告している。

投票は現地時間午後9時に締め切られた。

選挙管理委員会は声明で、有権者総数の約51.9%に当たる159万人以上が投票したと報告した。この中には海外の投票所で投票した26万4千人が含まれている。

2021年の議会選の投票率は48%強であった。

与党「行動と連帯(PAS)」は投票終了後の声明で、「選挙プロセスを乗っ取ろうとするロシアの試みは巨大であり、国家機関は投票の安全性と完全性を確保するために奮闘している」と述べた。

地元メディアの世論調査によると、与党PASは今回の選挙で過半数を割り込む可能性がある。

2022年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して以降、モルドバとロシアの関係は急速に悪化した。モルドバは地理的にも政治的にもロシアと欧州の狭間に位置する旧ソ連国家であり、長年にわたり親欧州派と親ロシア派の対立を抱えてきたが、ウクライナ戦争の勃発はこのバランスを大きく変える契機となった。

戦争開始直後、モルドバは中立の立場を維持しつつも、ロシアの侵攻を非難し、ウクライナからの難民を多数受け入れた。特に注目すべきは、2022年6月にモルドバがウクライナとともにEU加盟候補国に認定されたことである。これにより、モルドバは欧州統合の道を本格的に進み始めた。一方で、ロシアはこの動きを警戒し、モルドバに対して政治的・経済的な圧力を強めた。

エネルギー分野では特に深刻な影響が見られた。モルドバは長年、ロシア国営ガスプロムから天然ガスを輸入していたが、戦争以降、価格の高騰や供給の不安定化が生じ、モルドバ経済に大きな打撃を与えた。また、ガス契約をめぐる交渉でもロシアは強硬な姿勢を示し、これが両国関係の緊張をさらに高める一因となった。

安全保障面では、モルドバ国内に存在する親ロシア派の分離主義地域「沿ドニエストル地域」の動向が注目されている。ロシアはこの地域に兵力を駐留させており、戦争の影響でこの存在が改めて国際的な懸念事項となった。モルドバ政府はロシア軍の撤退を要求しているが、ロシア側はこれに応じていない。さらに、2023年にはモルドバ政府がロシアのスパイ活動やハイブリッド攻撃の可能性を警戒し、複数のロシア外交官を国外追放するなどの対抗措置を取った。

一方、ロシアはモルドバに対し、「欧米の操り人形」との批判を強め、国内の親欧州派政権に対する不信感をあらわにしている。ロシアのメディアはモルドバ政府の欧州寄りの政策を反ロシア的と報道し、モルドバ国内でも情報戦や分断工作が展開されているとの指摘がある。

こうした中で、モルドバは安全保障やエネルギーの多角化、欧州との協力強化を進めており、特にルーマニアとの関係を深めている。EUやNATOとの連携も強まりつつあるが、モルドバは憲法で中立を定めているため、NATO加盟には慎重な姿勢を維持している。

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