◎モルドバ政府はウクライナ侵攻がもたらしたエネルギー価格の高騰、インフレ、ウクライナ避難民の大量流入、東部の分離主義国家「沿ドニエストル」をめぐる問題に直面し、対応に苦慮している。
モルドバの首都キシナウで19日、インフレに抗議する集会が開かれ、数千人がサンドゥ(Maia Sandu)大統領に辞任を要求した。
デモを主催したのは極右政党「ショル党」が率いる野党連合。デモ隊は政府に市民の暖房費を全額公費で負担するよう求めた。
ショル党のリーダーはイスラエルに亡命したモルドバのオリガルヒとして知られている。この男は最近、ロシアとつながりがあるとして米国務省の制裁リストに追加された。
サンドゥ政権は昨年10月、憲法裁判所にショル党を違法組織に指定するよう求める請願書を提出。同裁はこれを認めた。
デモに参加した人々は「サンドゥ、去れ!」「モルドバの夜明け」などと書かれたプラカードを掲げていた。
AP通信の取材に応じた男性は、「政治家は金をため込み、市民が飢えるところを高いところから見ている」と語った。
サンドゥ氏は先週、「ロシアはモルドバ政府の転覆を画策し、EU加盟に向けた取り組みを阻止しようとしている」という見方を示した。
またサンドゥ氏はロシアが野党の集会を利用して暴力を煽り、政権交代を狙っていると主張した。「ロシアはいくつかの内部勢力に資金を提供しています。その代表がショル党であり、彼らはロシアの命を受け、犯罪に手を染めようとしているのです...」
ロシア外務省はこの告発を「荒唐無稽」と一蹴している。
モルドバ政府はウクライナ侵攻がもたらしたエネルギー価格の高騰、インフレ、ウクライナ避難民の大量流入、東部の分離主義国家「沿ドニエストル」をめぐる問題に直面し、対応に苦慮している。
モルドバ政府は昨年、ロシアに100%依存している天然ガス供給を一部遮断され、エネルギー危機に見舞われた。ショル党はサンディ氏が対応を誤ったと批判し、昨年秋頃から各地で抗議デモを続けている。
連邦検察はショル党がロシアの支援を受けているとして憲法裁判所に違法組織とするよう請願、受理された。
地元メディアによると、警察当局は18日、ショル党の違法な資金運用に関与したとされる党員の自宅20以上を家宅捜索したという。
警察は家宅捜索後、8人を逮捕した。
ショル党は19日、「サンディ政権は19日のデモを阻止するために警察官数千人を動員し、キシナウへの立ち入りを妨害した」と主張した。
一方、米政府はショル党について、「その代表は腐敗したロシア・オリガルヒやモスクワに拠点を置く組織と連携してモルドバの政情不安を引き起こし、同国のEU加盟を阻止しようとしている」と非難している。
モルドバは戦地に極めて近く、ウクライナと1200km超の国境を共有し、ロシアの圧力にさらされている。
一部の専門家は、「ロシア軍はウクライナ南部の黒海・アゾフ海沿岸地域(オデーサやヘルソンなど)を併合し、モルドバ東部沿ドニエストルにつながる回廊の構築を目指している」と指摘している。