◎ドイツのアンゲラ・メルケル首相は訪問先のウクライナで、ロシアがノルドストリーム2ガスパイプラインを対ウクライナの武器として利用した場合、新たな制裁を科す可能性があると警告した。
2021年8月22日/ウクライナ、首都キエフにあるマリア宮殿、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領とドイツのアンゲラ・メルケル首相(Sergey Dolzhenko/Pool/AP通信)

8月22日、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は訪問先のウクライナで、ロシアがノルドストリーム2ガスパイプラインを対ウクライナの武器として利用した場合、新たな制裁を科す可能性があると警告した。

メルケル首相はウォロディミル・ゼレンスキー大統領との共同記者会見の中で、ウクライナ東部問題を議論するロシア、ウクライナ、フランス、ドイツの4カ国首脳会談の開催を提案した。

また、ノルドストリーム2建設プロジェクトに対するウクライナの懸念を理解していると強調し、ロシアがパイプラインを東部問題の武器として利用した場合、制裁を科す可能性があると示唆した。

ロシアのパイプラインは半国営企業のガスプロム社が管理しており、ノルドストリーム2が完成すればドイツへの天然ガス供給量は増えるが、ウクライナへのガス供給量は東部問題の影響で削減される可能性がある。

ウクライナの経済はロシアの天然ガスに大きく依存しており、現在の供給契約が満了を迎える3年後に切れた場合、他国から天然ガスを輸入しなければならなくなる。

ゼレンスキー大統領はノルドストリーム2建設プロジェクトを「クレムリンの地政学的兵器」と呼び、「ヨーロッパ全体に危機をもたらす」と述べた。

メルケル首相はゼレンスキー大統領の懸念を理解していると述べ、「ドイツはノルドストリーム2を武器(ウクライナに対する圧力)として利用させないというアメリカのコミットメントに同意している」と強調した。

また、パイプラインが武器として利用された場合、ドイツはアメリカとの協定に基づき、ロシアに制裁を科す可能性があると述べた。

ゼレンスキー大統領はロシアとのガス供給契約が3年後に切れた場合、ウクライナは数十億ドルの輸送費損失を被ることになると警告した。

メルケル首相はウクライナの再生可能エネルギー部門の拡大を支援するために、10億ドル以上を出資すると約束した。また、今秋誕生する新政権はウクライナと同じ精神を持って働き、領土保全を回復し、国内改革を継続すると付け加えた。

アメリカは長い間、露独を結ぶノルドストリーム2は欧州のロシアへの依存度を高め、ロシアが脆弱な東ヨーロッパおよび中央ヨーロッパの国々、特にウクライナに政治的圧力をかける可能性があると懸念を表明してきた。

しかし、ジョー・バイデン大統領は今年、プロジェクトに関与したドイツの関係者への制裁を放棄し、共和党員だけでなく進歩的な民主党員からも厳しく非難された。ロシアはEUで使用される天然ガスの約40%を供給している。

ロシアは2014年にウクライナのクリミア半島を併合したうえでクリミアは自国の領土と宣言したが、国際社会はこの主張を認めていない。その後、クリミアの北東部に位置するドネツクとルハンシクの分離主義者はウクライナから独立すると宣言した。

ロシアはドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立を承認したが、西側諸国とウクライナは両国の分離主義者をテロリストと見なし、独立宣言を却下している。

ウクライナ軍とロシアの支援を受ける分離主義者によるドンバス戦争の死亡者は14,000人を超え、解決に向けた交渉は行き詰まっている。ドイツとフランスは2015年に調印された停戦協定ミンスク2を含むドンバス戦争の平和的解決に向けた交渉を仲介した。

2021年8月20日/ロシア、首都モスクワのクレムリン、ドイツのアンゲラ・メルケル首相に花束を手渡すウラジーミル・プーチン大統領(Sputnik/クレムリン/Pool/AP通信)
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