フランス新首相にルコルニュ氏、組閣前に野党と協議へ
ルコルニュ氏は39歳。フランス史上最年少の国防相であり、ロシアのウクライナ侵攻を契機に2030年までの大規模な軍事増強計画の立案者である。
とルコルニュ国防相(AP通信).jpg)
フランスのマクロン(Emmanuel Macron)大統領は9日遅く、ルコルニュ(Sebastien Lecornu)国防相を新首相に任命し、26年度予算案について、政党間の合意形成を直ちに図るよう指示した。
ルコルニュ氏は39歳。フランス史上最年少の国防相であり、ロシアのウクライナ侵攻を契機に2030年までの大規模な軍事増強計画の立案者である。
マクロン氏の側近であるルコルニュ氏はこの1年で4人目となる首相に就任した。
国民議会(下院、定数577)は8日、バイル(Francois Bayrou)首相の信任決議案を反対多数で否決。これにより、9ヵ月前に発足したバイル政権は崩壊し、マクロン氏は新たな首相を任命するか、議会を解散するかの選択を迫られていた。
フランスでは大統領が首相を任命するが、その首相が議会、特に国民議会の支持を得られなければ実際の統治は困難になる。このため首相は、自らの施政方針を国民議会に提示し、信任を問うことができる。
この信任投票は政府が自主的に行う場合と、野党が内閣不信任動議を提出して実施される場合の二つがある。
政府側からの信任投票は、首相が自らの政策基盤を固めたいときや与党内の結束を確認したいときに用いられる。
一方で不信任動議は、議会において政府に対する反対勢力が結集したときに提出される。不信任が可決されるには、国民議会における絶対多数の賛成が必要とされる。つまり、過半数を超える賛成がなければ不信任は成立せず、政府は存続する。
この仕組みによって、不安定な少数派の連立による頻繁な政権交代を避け、政府の安定性を高める工夫がなされている。
もし不信任が成立した場合、首相と内閣は総辞職を余儀なくされ、大統領は新たな首相を任命するか、国民議会を解散して総選挙を行う道を選ぶ。
第五共和政では大統領権限が強く、首相は大統領との関係と議会の力学の両方を考慮せざるを得ない。このため信任投票は、単なる制度的手続きにとどまらず、フランス政治における大統領・首相・議会の三者関係を映し出す重要な場となっている。
バイル氏は債務抑制のために公共支出を大幅に削減すべきだという自身の見解を野党議員も支持すると信じたが、賭けは失敗に終わった。
極右「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)議員は9日、マクロン氏を批判し、今すぐ議会を解散するよう求めた。
ルコルニュ氏がこの混乱を収束できるかどうか不明だ。マクロン氏はルコルニュ氏に対し、組閣前に、まず議会のすべての政党と協議し、予算について合意するよう求めた。
マクロン氏は声明で「首相の行動は我が国の独立と権力の擁護、フランス人、そして我が国の統一のための政治的・制度的安定に奉仕することによって導かれるだろう」と述べた。
ルコルニュ氏は1986年に生まれ、若い頃から政治の道に入り、16歳でサルコジ元大統領の選挙運動に参加した。
その後、地方自治体の首長として頭角を現し、早い段階から政府の要職に抜擢された。マクロン政権下では環境担当や海外領土担当を経て、防衛政策の中心人物に位置づけられている。
国防相としてのルコルニュ氏の最大の特徴はウクライナ戦争に対する積極的な関与である。
ロシアの侵攻以降、フランスはNATOやEUの枠組みの中で安全保障上の役割を強めており、ルコルニュ氏は軍需産業の拡大や防衛予算の増額を主導した。
具体的には、2024年から2030年にかけて史上最大規模の防衛予算を編成し、兵器生産能力を高めることでウクライナ支援と自国防衛の両立を図った。また、兵士の待遇改善や人材確保のための施策も推進し、軍人家族への支援強化を通じて士気を高める取り組みを行った。
その政策は国内外で評価が分かれる部分もある。国内では財政負担増への懸念がある一方で、国防力強化を歓迎する声も根強い。
国際的にはウクライナ支援の継続を主張する姿勢が評価される一方で、欧州が米国依存から自立するべきだという観点から、ルコルニュ氏は欧州主導の安全保障体制の必要性を強調している。