◎ロシア軍の監視下で行われたクリミア編入住民投票は住民の97%が賛成に投票したと信じられている。
ロシア軍に占領されたウクライナ東部と南部の州でロシア編入の是非を問う住民投票の準備が進んでいる。
東部の分離主義国家ドネツクとルガンスク人民共和国、南部ヘルソン州とザポリージャ州の親ロシア勢力は23日~27日にかけて住民投票を行うと主張している。
4地域の首長はウクライナ軍による電光石火の反攻で領土を奪われることを恐れ、20日にこの計画を突然発表した。
住民投票の結果は市民が参加しようがしまいが最初から決まっており、4地域はロシア編入が決まったと宣言するだろう。ロシア連邦議会とプーチン(Vladimir Putin)大統領がこれを認めれば、4地域は2014年のクリミア半島のように無理やり併合されることになる。
ロシア軍の監視下で行われたクリミア編入住民投票は住民の97%が賛成に投票したと信じられている。
西側諸国はこの住民投票が戦争をエスカレートさせると予想している。ロシア軍は4地域に対するウクライナ軍の攻撃を「ロシア領に対する攻撃」とみなすだろう。
ルハンスク州のガイダイ(Sergiy Gaiday)知事は22日、ウクライナ公共放送のインタビューの中で、「もしここがすべてロシア領になれば、ロシア軍はここに対する攻撃をロシア領への攻撃と宣言できるだろう」と指摘した。
国連安保理、NATO、EU、欧州安保協力機構(OSCE)、欧米諸国はこの住民投票を偽物と呼び、非難している。
欧州の選挙を監視するOSCEはウクライナの法律や国際基準に準拠しておらず、地域の安全も全く確立されていないため、住民投票は法的効力を持たないと指摘している。
4地域に独立したオブザーバーはひとりもおらず、住民の多くは地域外に避難している。
しかし、住民投票は強行されるようだ。仮にウクライナ軍が投票所をすべて破壊したとしても、首長たちは予定通り行ったと主張するだろう。
国営ロシア通信(RIA)はザポリージャ州当局者の話を引用し、「投票所は厳重な警備下に置かれる」と報じた。
バイデン(Joe Biden)大統領など西側の指導者が投票を偽物や見せかけと非難する一方、専門家たちは投票が戦況に影響を与える可能性は低いと予想している。
米シンクタンク戦争研究所は、「住民投票の有無にかかわらず、領土を取り戻すというウクライナの決意は微塵も揺るがず、損なわれず、ロシアの侵略からウクライナを守るという西側の決意も揺るがない」と分析している。
ウクライナ政府は住民投票を「ロシアの弱さの表れ」と指摘した。
住民投票発表の翌日、プーチン氏は予備役の一部を動員する大統領令に署名したと発表し、さらに、ロシア領を攻撃すれば致命的な結果を招くと警告した。
ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は22日、ビデオ演説で、「ロシアがどのような決定を下そうと、ウクライナは何の影響も受けず、やることも変わらない」と述べ、反攻作戦を継続すると誓った。
「私たちの目的は決まっています。我が国の解放、国民の保護、任務を遂行するために世界の支持を結集すること。ロシアが何をしようと、私たちのやることに変わりはありません」
AP通信によると、ルガンスク人民共和国では「住民投票に参加しよう」「我が栄光のロシア」などと書かれたポスターがあちこちに貼り付けられ、投票への参加を促すビラが配られている。
東部ハルキウ州を奪還したウクライナ軍はドネツク・ルハンシク州の奪還を目指し、ゆっくり前進しているものとみられる。