SHARE:

ルーブル美術館窃盗事件「30秒早く通報できれば防げた可能性」議会上院が報告

今回の事件をめぐる聴聞会では、当該の防犯脆弱性は以前から複数回の監査で指摘されていたにもかかわらず、十分な改善が行われていなかったことも明らかになった。
フランス、パリのルーブル美術館(ロイター通信)

10月19日未明、フランス・パリのルーブル美術館に強盗団が侵入し、同館所蔵の王室宝飾品が盗まれる事件が発生した。犯行は短時間で行われ、被害総額は1億2000万ドルとされる。強盗団は展示室の窓を破壊して内部に侵入し、ガラスケースを切断、宝石を持ち去った。強盗団はその後、バイクを使って逃走した。

警察当局によると、複数の容疑者が逮捕されているが、強奪された宝石の多くはいまだ回収されていない。

議会上院は10日に行われた聴聞会において、文化省直轄の査察当局が美術館の監視体制に「致命的な脆弱性」があったと報告。盗人たちが窓を破って侵入したアポロ・ギャラリー付近には、少なくとも2台の防犯カメラが設置されていたものの、そのうちの1台は当日機能しておらず、もう1台は映像がライブで監視されていなかった。

つまり、侵入の瞬間を捉えていたにもかかわらず、館側のセキュリティ担当者はその映像をリアルタイムでチェックしていなかったのである。

報告によると、カメラのズーム機能が操作されたのは侵入から約4分後、午前9時38分のことだった。しかしその時点では、宝石の窃盗と逃走はほぼ完了していた。

監視室には多数の映像が流れていたが、同時にすべての映像を確認できる画面が不足しており、しかもどのカメラ映像をチェックするかという優先順位や監視体制の明確な運用がなかった。結果として、「誰も見ていない画面」が存在していた。

このため、査察当局の責任者は、「30秒早く警備か警察に通報があれば、犯人を取り押さえられていた可能性が高い」と述べた。

今回の事件をめぐる聴聞会では、当該の防犯脆弱性は以前から複数回の監査で指摘されていたにもかかわらず、十分な改善が行われていなかったことも明らかになった。具体的には、2019年に実施された監査で、ギャラリー付近のバルコニーが侵入に対して構造的な弱点を持っており、脚立などで容易にアクセス可能とされていた。にもかかわらず、その指摘は無視され、適切な補強や防犯対策は取られていなかった。

また、館内全体をカバーするための防犯カメラの設置率も低く、2024年時点で展示室の約39%しか導入されていなかったとの報告もある。完全な映像網の整備には2032年までかかる見込みだという。

こうした慢性的な警備軽視と、予算・管理体制の不備が今回の大惨事を招いたという見方を、多くの関係者が指摘している。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします