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ルーブル美術館が歴史的な危機に直面、ストと窃盗事件

ルーブルは長年にわたり世界中の芸術愛好家を魅了してきたが、その運営体制が試される重大な局面に立たされている。
2025年12月17日/パリ、フランスのルーブル美術館(AP通信)

フランス・パリのルーブル美術館が歴史的な危機に直面している。職員によるストライキと約1億ドルの宝飾品強奪事件という2つの重大な出来事が重なり、運営管理の在り方が国内外で厳しく問われている。

発端は10月に発生した大胆な窃盗事件である。この事件では展示されていた王室の宝飾品が盗まれ、世界的な注目を集めた。窃盗は開館中に行われ、短時間で犯行を終えたとされる。犯行は極めて計画的であり、わずかな時間で貴重な宝石類を持ち去った。

この事件を受け、国会による調査が行われ、防犯カメラが部分的に機能せず、警備体制の脆弱さが露呈した。

この事件後、美術館内部では長年くすぶっていた職員の不満が爆発。職員らは慢性的な人員不足、老朽化した建物の維持管理の不備、管理側の対応への不満を訴え、12月15日にストを開始した。

労働組合はこの行動について「ルーブルが危機的な状況にある」と声明を出し、管理側に対して具体的な改善策を要求している。

ストはルーブルの運営に大きな混乱をもたらしている。世界で最も訪問者数が多い美術館として通常は多くの観光客を迎えるルーブルだが、ストにより一部で休館や開館遅延が発生し、年末の繁忙期に大きな影響が出ている。職員たちは管理側が提示した賃金改善や人員増加案などの対策は不十分だとしてこれを拒否し、ストを継続する方針を示した。

さらに、内部のインフラも深刻な状態にあるとされる。老朽化した床梁や漏水による書籍の損傷などが報告されており、複数のギャラリーが一時閉鎖された。これらは単なる労働条件の問題ではなく、美術館全体の安全性や保存体制への懸念として広く共有されている。

こうした状況を受け、文科省は危機管理のための特別チームを立ち上げ、外部から専門家を招いて美術館運営の再構築に着手している。しかし、労組側は抜本的な変革を求めており、労使交渉も難航している。政府や管理側がどのような対応策を講じるかが今後の焦点となる。

こうした一連の混乱は単なるストや窃盗事件という枠を超え、世界文化遺産としてのルーブルの維持管理と未来へのビジョンをめぐる国民的な議論に発展している。ルーブルは長年にわたり世界中の芸術愛好家を魅了してきたが、その運営体制が試される重大な局面に立たされている。

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