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リトアニア政府が国家非常事態宣言、ベラルーシの「ハイブリッド攻撃」受け

リトアニア当局は今回、それらの数や飛行経路が偶発的なレベルを超え、意図的かつ組織的に送られている「妨害行為」、さらには「ハイブリッド攻撃」の一環と断じた。
リトアニア領内、ベラルーシから飛来したとされる気球(AP通信)

リトアニア政府は9日、隣国ベラルーシの気象観測用気球や密輸気球が同国の領空を繰り返し侵犯したことなどを受け、国家非常事態を宣言した。これは航空安全と国の安全保障に対する深刻なリスクを理由としたものである。

これらの気球はタバコの密輸などに使われてきたが、リトアニア当局は今回、それらの数や飛行経路が偶発的なレベルを超え、意図的かつ組織的に送られている「妨害行為」、さらには「ハイブリッド攻撃」の一環と断じた。

直近では、首都ビリニュスの国際空港が複数回閉鎖され、これまでに延べ60時間以上の運用停止に追い込まれた。これにより350便以上のフライトが影響を受け、約5万1000人の乗客が足止めを食らった。

今回の非常事態宣言により、軍が警察・国境警備隊などとともに国境地帯での巡回および警戒活動を行うことが可能となった。さらに、特定区域への立ち入り制限、人や車両の検査、任意拘束など、法執行機関の権限が拡大される。これにより、気球の送出や回収、密輸組織への取り締まりを強化する。

政府は今回の措置について、「市民生活への影響は最小限に抑える」と説明しているが、背景にあるのは単なる密輸対策ではなく、ベラルーシおよびその後ろ盾であるロシアによる、NATO加盟国リトアニアへの圧力や挑発の可能性に対する強い警戒である。

一方、ベラルーシ政府は気球の送出と国による関与を否定。リトアニアの非常事態宣言を「過剰反応」と批判し、交渉のテーブルに着くよう求めた。

リトアニアが今回導入した非常事態体制は2021年の移民危機、2022年以降のロシアによるウクライナ侵攻を背景とした安全保障上の緊張に続くもので、東欧、バルト地域における「ハイブリッド攻撃」と警戒される新たな局面を示す。国境管理、空域防衛、密輸対策といった分野でEUやNATOとの協調が今後さらに問われることになる。

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