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ベラルーシ野党指導者「ルカシェンコに騙されるな」トランプ氏に警告

トランプ氏は先月の米露首脳会談に先立ち、ルカシェンコ氏と電話会談を行った。
ベラルーシの野党指導者チハノフスカヤ氏(ロイター通信)

ベラルーシの野党指導者チハノフスカヤ(Svetlana Tikhanovskaya)氏は24日、トランプ(Donald Trump)米大統領に対し、ベラルーシの独裁者であるルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領に騙されないよう警告した。

チハノフスカヤ氏は国連総会に合わせて米ニューヨークを訪問。AP通信の取材に対し、「ルカシェンコは二枚舌でトランプ大統領を騙そうとしている」と語った。

トランプ氏は先月の米露首脳会談に先立ち、ルカシェンコ氏と電話会談を行った。

ルカシェンコ氏はこの会談後、16人の政治犯を赦免した。

トランプ政権は今月、政治犯の一部釈放と引き換えにベラルーシに対する制裁を緩和。これにより、ベラルーシはボーイング機やその他航空機の修理や部品購入が可能となった。

ベラルーシの人権団体「ビアスナ人権センター」によると、同国で収監されている政治犯は約1200人。その中には22年にノーベル平和賞を受賞した人権活動家ビアリアツキー(Ales Bialiatski)氏や野党指導者のコレスニコワ(Maria Kolesnikova)氏などが含まれている。

チハノフスカヤ氏はAPのインタビューで数十人の政治犯が解放されたとして、トランプ氏に謝意を示した。

またチハノフスカヤ氏は「この解放以降も、当局は弾圧を続け、多くの政治犯を捕らえ、裁判にかけることなく刑務所に収監している」と述べた。

そして、「ルカシェンコはトランプ大統領を騙して、米国との取り引きを成功させ、刑期満了間近の政治犯を釈放し、新たな政治犯を捕らえている」と強調した。「あの男は利益を得るために政治犯を取引の材料にしています...」

ベラルーシの人権状況は欧州最悪とされ、国家権力は長期にわたりルカシェンコ氏の支配下にあり、言論、報道、集会の自由が大幅に制限されている。政府に批判的なメディアやジャーナリストは監視や圧力の対象となり、独立系新聞やオンラインメディアは閉鎖や制裁を受けることが多い。また、政治的な抗議活動やデモは厳しく制限され、警察や治安部隊による逮捕や暴力が常態化している。2020年の大統領選挙後には大規模な抗議が発生したが、当局は組織者や参加者を拘束し、拷問や虐待の報告も国際人権団体から指摘されている。

司法の独立性も著しく欠如しており、政治犯や政府批判者は公正な裁判を受けられない場合が多い。刑務所や拘置所における待遇も国際基準に達しておらず、過密状態や暴力、医療不足が問題となっている。さらに、反政府活動や市民運動に関与した個人やその家族に対する社会的・経済的圧力も報告されており、職場での解雇や教育機会の制限などが行われるケースがある。

表現の自由に関連して、インターネットやSNSに対する監視や検閲も強化されている。VPNや匿名通信を使用して情報発信を行う市民もいるが、当局はこれを取り締まるための法制度を整備しており、オンライン上の活動もリスクを伴う状況にある。また、外国の非政府組織や支援団体の活動も制限され、登録や報告義務が厳格に課されている。

国際社会はベラルーシの人権侵害を繰り返し非難しており、EUや米国などは制裁措置を導入している。しかし、ルカシェンコ政権は外部からの圧力に対して強硬な姿勢を崩しておらず、国内の改革や人権改善は進んでいない。特に政治的自由、報道の自由、司法の独立、集会の自由といった基本的人権の保護が十分に確立されていないことが、長期的な課題として残っている。

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