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イタリア首相が中東歴訪開始、イラン戦争とエネルギー供給不安に対応へ


今回の歴訪の背景には中東情勢の急激な悪化がある。
2026年1月9日/イタリア、首都ローマ、メローニ首相(ロイター通信)

イタリアのメローニ(Giorgia Meloni)首相が3日、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)を訪問する中東歴訪に乗り出した。これは事前発表のない異例の外交行動であり、イランを巡る軍事的緊張の高まりとエネルギー供給不安への対応が主な目的である。

訪問は2日間の日程で、メローニ氏はサウジ・ジッダでサルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)、カタールおよびUAEでも首脳会談を行う予定である。EU首脳が米イスラエルとイランの戦闘開始以降にサウジアラビアを訪問するのは初めてであり、欧州として湾岸諸国への関与を強める姿勢を示すものといえる。

今回の歴訪の背景には中東情勢の急激な悪化がある。イランによる石油・ガスインフラ攻撃は湾岸地域の安全保障環境を大きく揺るがし、各国は防衛体制の強化を迫られている。イタリア政府はすでに湾岸諸国に対し防空システムなどの防衛装備を提供しており、今後の追加支援にも前向きな姿勢を示している。

一方で、より差し迫った課題がエネルギー供給である。イラン情勢の緊迫化によりホルムズ海峡の航行が不安定化し、液化天然ガス(LNG)輸送にも影響が出ている。実際、イタリアはカタールからのLNG供給の一部停止を通知され、4月から6月にかけて複数の輸送が見送られる見通しとなった。

さらに、イランの攻撃によりカタールのLNG輸出能力の17%が損なわれ、欧州全体のエネルギー市場にも波及する懸念が強まっている。イタリアはガス消費の約1割をカタール産に依存しており、中東産原油も輸入の約12%を占めるなど、湾岸地域への依存度は高い。

こうした状況を受け、イタリアは供給源の多角化を急いでいる。メローニ氏は直前にアルジェリアを訪問してガス確保を図ったほか、今後はアゼルバイジャン訪問も予定している。また、米国のLNG施設からの輸入を6月以降に開始する計画も進められている。

今回の湾岸訪問は単なるエネルギー確保にとどまらず、外交・安全保障の両面での関係強化を狙ったものでもある。イタリアは湾岸諸国を「戦略的パートナー」と位置づけ、地域の安定は自国経済や在留自国民の安全にも直結する。実際、同地域には多数のイタリア人や軍関係者が滞在しており、紛争の長期化は直接的なリスクとなる。

総じてメローニ氏の歴訪は、エネルギー危機と地政学リスクが交錯する中で、イタリアが積極的な外交を通じて自国の安全保障と経済基盤を守ろうとする動きを示している。中東情勢の行方が不透明な中、欧州各国にとっても湾岸地域との関係は今後一層重要性を増すとみられる。

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