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イタリア各地で親パレスチナデモ、暴動も、数万人が参加

メローニ政権は2022年に誕生した極右政党「イタリアの同胞」を基盤とする政権であり、対イスラエル政策においては歴代政権よりも一層親密な姿勢を明確にしている。
2025年9月22日/イタリア、ミラノの通り、パレスチナ・ガザ地区への連帯を示すデモ(AP通信)

イタリアの主要都市で22日、パレスチナ・ガザ地区への連帯を示すデモ行進や集会が開かれ、数万人がイスラエル政府とメローニ政権に抗議した。

現地メディアによると、ミラノ中心部のデモに参加した一部が暴徒化し、警察と衝突したという。

デモを主催した複数の労働組合は共同声明で、メローニ政権にパレスチナ国家の承認を求め、公共交通機関、鉄道、学校、港湾を含む官民両セクターで24時間のゼネストを呼びかけた。

このストライキにより全国で混乱が生じ、鉄道は大幅な遅延、首都ローマを含む主要都市ではバスなどの公共交通機関が制限された。

ミラノでは黒服に身を包み警棒を携えた数十人の暴徒が中央駅正面玄関を破壊しようと試みた。機動隊は催涙スプレーと警棒で応戦、暴徒は瓶や石を投げつけ、緊張が高まった。

ボローニャでは高速道路を封鎖したデモ隊を解散させるため警察が放水車を投入した。

X(旧ツイッター)で拡散した動画にはナチスのシンボル「ハーケンクロイツ(鉤十字)」が描かれた旗を掲げた集団が「ユダヤ人を根絶やしにしろ」と叫びながら行進する様子が映っていた。この動画はローマ市内で撮影されたとみられ、警察が捜査している。

イタリアでハーケンクロイツを掲げた場合、刑事責任が問われる可能性がある。刑法第4条や第414条ではファシズムやナチズムの復活を扇動する行為や、人種差別的・憎悪的言動を公共の場で行うことが処罰対象とされている。また、戦争犯罪や人道に対する罪を美化する行為も違法とされる。具体的には、公共の場でハーケンクロイツを掲げたり、ナチス賛美の旗印を掲示したりする行為は「憎悪の扇動」とみなされ、罰金や禁錮刑の対象となることがある。

メローニ政権は2022年に誕生した極右政党「イタリアの同胞」を基盤とする政権であり、対イスラエル政策においては歴代政権よりも一層親密な姿勢を明確にしている。メローニ(Giorgia Meloni)首相自身は「西洋文明の守護者」としてのイスラエルの役割を強調し、右派的な価値観や安全保障上の観点からイスラエルとの連携を重視してきた。これは、同じ右派勢力である米共和党や中東の一部保守派と軌を一にする立場でもある。

2022年の政権発足直後から、メローニ氏はイスラエルを「重要な戦略的パートナー」と位置付け、ガザ情勢やイラン核問題などをめぐりイスラエルの安全保障上の立場を擁護する発言を繰り返している。とりわけ2023年以降、ガザ紛争が激化するなかで、メローニ政権はEU内で最も強くイスラエル支持を打ち出した国の一つとなった。EU全体では人道支援やイスラエルの入植活動批判を行う国も多いが、イタリアはむしろイスラエル側への理解を示す姿勢を鮮明にしている。

経済面でも両国は接近している。イタリアはエネルギー輸入の多角化を進めており、東地中海ガス開発におけるイスラエルの役割に注目している。エネルギー分野での協力はEUのロシア依存脱却戦略とも連動し、イスラエルにとっても欧州市場開拓の足がかりとなっている。また、防衛産業やサイバーセキュリティ分野においても協力関係が拡大しており、イタリアはイスラエル製兵器や防衛技術に強い関心を持っている。

ただし、この親密路線には一定のリスクも伴う。イタリア国内にはパレスチナ支持や中東政策の中立性を求める声も根強く、またEU内での意見対立を深めかねない。特にフランスやスペインが人道的観点からイスラエルを批判する傾向を強める中、イタリアが一方的にイスラエル寄りに傾くことは外交的孤立を招く可能性もある。さらに、イスラエル国内での司法制度改革をめぐる混乱や人権問題に対しても、メローニ政権は比較的沈黙を守っており、この姿勢は国際的な人権団体から批判されている。

メローニ政権下のイタリアはイスラエルとの戦略的関係を強化し、西側右派的な価値観の連携のもとで安全保障・エネルギー・技術分野の協力を深化させている。しかし同時に、EU内のバランスや国内世論との間に緊張をはらんでおり、この関係は今後の中東情勢と欧州外交の力学次第で大きく揺らぐ可能性を抱えている。

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