イランの「60%濃縮ウラン」備蓄量440キロ超=IAEA
イランは1カ月間で備蓄量を32.3キログラム増やしていたことが明らかになった。
のロゴとイランの国旗(Getty-Images).jpg)
国際原子力機関(IAEA)によると、イランは6月13日にイスラエル軍が核施設などへの攻撃を開始する前の時点で、60%の濃縮ウランの備蓄量を増やしていたという。
AP通信は3日、IAEAの機密文書を引用し、「イランは6月13日時点で60%の濃縮ウランを440.9キログラム保有していた」と報じた。
イランは5月時点で60%の濃縮ウランを408.6キログラム保有。IAEAによると、これは核弾頭9発分に相当する。
<ウラン(U-235)の濃縮度>
▽0.7%:標準
▽2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
▽3.67%以下:イラン核合意の規定値
▽20%以上:高濃縮ウラン
▽90%以上:核兵器用
この報道により、イランは1カ月間で備蓄量を32.3キログラム増やしていたことが明らかになった。
IAEAは文書の中で、「この数値はイランから提供された情報、25年5月17日から6月12日までの検証活動、および関連施設の過去の稼働に基づく推定値に基づいている」と述べている。
IAEAによると、60%濃縮ウラン約42キログラムを90%まで濃縮すれば、理論上は1発の核弾頭を製造することができる。
欧州主要3カ国(英仏独、E3)は先月末、イランの核開発計画をめぐり国連制裁の再発動に向けた措置を開始した。
これは国連安保理の拒否権でも回避できないように設計されており、早ければ10月にも発効する可能性がある。
これにより、イランの海外資産凍結、武器取引停止、弾道ミサイル計画開発への制裁などが再び実施され、すでに打撃を受けている同国経済をさらに圧迫することになる。
イラン政府はこの動きに反発し、核不拡散条約(NPT)から離脱する可能性もあると示唆。これが現実になれば、2003年にNPTを放棄し、その後核兵器を製造した北朝鮮に続く可能性がある。
イラン政府は5月31日にIAEAがイランを非難する報告書を公表し、核不拡散義務に違反していると宣言した結果、イスラエルが空爆に踏み切ったと非難してきた。
またイランはIAEAの監督下にある非核保有国のイランが核保有国の米国とイスラエルの攻撃を受けたこと、そして、核不拡散条約(NPT)に加盟せず、核兵器を保有するイスラエルが核施設を攻撃したことを国際法違反と糾弾している。
NPTで核保有を認められた5カ国(米露中英仏)以外に核兵器を保有する国のひとつがイスラエルであり、IAEAを含む国際社会はそれを黙認してきた。
イスラエルは現在、核弾頭を約90発を保有していると推定されるが、その保有を認めたことは一度もない。
イランの核問題は米国、イスラエル、欧州諸国を中心に長年対立が続いてきた。
問題の背景
イランは1970年にNPTに加盟し、「平和目的の核利用」を認められているが、核兵器の保有は禁止されている。しかし、2002年にイランが秘密裏にウラン濃縮施設を持っていたことが発覚し、「核兵器開発を隠れて進めているのではないか」と疑われた。
核合意(JCPOA)
この疑念を解消するため、イランと米国・イギリス・フランス・ドイツ・ロシア・中国の6カ国は2015年に「包括的共同行動計画(JCPOA)」という核合意を結んだ。
イランは、ウラン濃縮や核関連活動を大幅に制限する。
IAEAが厳しく監視する。
見返りに欧米は経済制裁を解除する。
という内容となっている。
合意の崩壊と再緊張
しかし、2018年にトランプ米政権が一方的に核合意から離脱し、イランへの制裁を再開。これに反発したイランは、徐々にウラン濃縮の制限を破り、核開発を加速させた。
現在では、イランは核兵器級に近い高濃縮ウラン(60%超)を400キログラム以上保有し、「核兵器開発まで数か月」とも言われている。ただし、実際に核兵器を製造したという証拠はまだない。
現在の情勢
25年9月現在、核合意の再建交渉は事実上停滞している。イラン国内では保守強硬派が権力を握っており、西側との妥協には消極的だ。
一方、イスラエルは「イランが核兵器を持つことは絶対に許容できない」として、さらなる軍事行動の可能性も示唆している。
中東の緊張が高まる中、イランの核問題は依然として国際安全保障上の重大課題である。