ハンガリー、極左勢力「アンティファ」をテロ組織に指定へ
アンティファは中央組織を持たない分散型の極左ネットワークであり、反ファシズムを軸に直接行動や抗議活動を行う運動である。
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ハンガリーのオルバン(Viktor Orbán)首相は19日、トランプ米政権に倣って極左勢力「アンティファ(反ファシスト運動の略称)」をテロ組織に指定すると表明した。
トランプ(Donald Trump)米大統領を「陛下」と呼ぶオルバン氏は国営ラジオのインタビューで、トランプ氏がアンティファを「主要テロ組織」に指定すると表明したことを「喜ばしい」と称賛した。
アンティファは「アンチ・ファシスト(Anti-Fascist)」の略称であり、極右やネオナチ、ファシスト的潮流に対抗する急進左派の運動体を指す。国家や政党に属さない分散型の運動であり、特定の指導部や組織的指揮系統を持たないのが特徴である。そのため「団体」というよりは思想的・実践的なネットワークの集合体として理解するのが適切である。
トランプ氏は18日にアンティファを主要テロ組織に指定すると表明したが、どのようにテロ組織に指定するのかは説明しておらず、ホワイトハウスもコメントを出していない。
オルバン氏はインタビューの中で、「アンティファはまさにテロ組織だ。ハンガリーも米国に倣って、アンティファのような連中をテロ組織に指定する時が来た」と述べた。
オルバン氏は15年以上に渡って政権を保持。同国で反ファシスト団体が政治活動を行うことはほとんどない。
しかし、オルバン氏は2023年に首都ブダペストで開催された極右団体の年次集会に参加した複数の人物が反ファシスト活動家らに暴行を受けた事件に言及した。
容疑者の1人であるイタリア国籍の反ファシスト活動家は事件後、1年以上勾留され、その処遇を巡りイタリアとの外交問題に発展した。
アンティファ(Antifa)は「反ファシズム」を標榜する政治運動・ネットワークであり、主に欧米で活動している。名称は「アンチ・ファシスト(Anti-Fascist)」の略で、ファシズムや極右勢力への直接行動を特徴とする。組織としての中央的な構造は持たず、非階層的・分散型のネットワークとして存在する点が特徴である。米国や欧州の一部地域では白人至上主義やネオナチ、排外主義に反対する抗議活動やデモに参加する形で目立つ活動を行っている。
アンティファの歴史は1920〜30年代のヨーロッパに遡る。当時のドイツやイタリアでナチス党やムッソリーニ率いるファシスト政権に対抗する左派組織が「反ファシスト運動(Antifaschistische Aktion)」として活動したことが起源とされる。第二次世界大戦後もヨーロッパでは極右勢力に対抗するネットワークとして断続的に活動が続いた。1990年代以降、特に米国において、ネオナチや白人至上主義団体への抗議活動を行うグループとして再び注目を集めるようになった。
アンティファの活動は直接行動を重視する傾向が強い。デモや抗議活動、街頭での対抗運動、場合によっては暴力的な衝突を伴うこともあるため、治安当局や保守派から批判されることが多い。ただし、アンティファ内部では暴力行為を戦略的手段の一つとして位置付ける一方、すべての構成員が暴力を支持するわけではなく、非暴力的な啓蒙活動や情報発信も行われている。SNSを通じた情報共有や極右勢力の監視、抗議活動の呼びかけも重要な活動手段である。
米国においては、トランプ政権下で「国内テロの脅威」として注目され、極右勢力や保守系メディアからしばしば批判の対象となった。アンティファは組織として登録されておらず、特定のリーダーも存在しないため、活動内容や参加者は地域や時期によって大きく異なる。このため、メディア報道において「暴力的な過激派」として描かれることもあれば、「反ファシズムの草の根運動」として評価されることもある。
アンティファは中央組織を持たない分散型の極左ネットワークであり、反ファシズムを軸に直接行動や抗議活動を行う運動である。その活動は政治的に議論を呼び、暴力行為や抗議手法の是非が社会的に大きな関心を集めている。