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ハンガリー政府、EUのウクライナ支援に拒否権行使、対立深まる

この融資はEUが年末に承認した対ウクライナ支援策の最終段階で、ウクライナの国家財政を安定させる狙いがある。
2024年6月27日/ブリュッセルのEU本部、ウクライナのゼレンスキー大統領(右)とハンガリーのオルバン首相(Getty Images/AFP通信)

ハンガリー政府は20日、EUがウクライナ支援のために用意した900億ユーロ(約16.4兆円)規模の融資パッケージを阻止すると表明した。シーヤールトー(Peter Szijjarto)外務貿易相は声明で、ウクライナ経由で供給されていたロシア産原油の輸送が停止されたことへの対抗措置として、石油輸送が再開されるまで融資決定に同意しないと述べた。

この融資はEUが年末に承認した対ウクライナ支援策の最終段階で、ウクライナの国家財政を安定させる狙いがある。しかし、EU予算規模を改変して非加盟国であるウクライナに巨額の資金を貸し付けることから、全加盟国の一致が必要となっている。ハンガリーはこの一致要件を盾に拒否権を行使した形だ。

背景にはハンガリーとウクライナ間でのエネルギー供給を巡る対立がある。ロシアからハンガリーやスロバキアへ原油を送るための重要パイプラインが1月27日以降停止し、両国への供給が止まったことが発端となっている。ハンガリー側はウクライナがパイプラインの修理を怠り、政治的な理由で再開を遅らせていると非難。これを「政治的な脅迫」と非難し、融資阻止の理由として強調している。

シーヤールトー氏はウクライナがEUとの協定に違反していると主張し、「ハンガリーはこの脅迫に屈しない」と表明した。またシーヤールトー氏は、ハンガリー納税者の資金がウクライナの紛争継続に使われることを認めないと述べ、パイプライン輸送が再開されるまで他のEU決定にも反対し続けると警告した。

ハンガリー政府は併せて、約180万バレルの原油を戦略備蓄から放出して国内需要を補う措置を発令した。これに対し、クロアチアのパイプライン運営会社は別経路で非ロシア産原油輸送を継続しているため備蓄放出は不要との見解を示すなど、対応に食い違いも出ている。

この動きはEU内部の亀裂を浮き彫りにしている。多くの加盟国はウクライナ支援を優先する立場を取っているが、ハンガリーとスロバキアはロシア産エネルギーへの依存を維持してきた経済的事情と、国内政治の事情からこれに反発してきた経緯がある。両国はこれまでにもディーゼル燃料の供給を停止するなど、対ウクライナ措置を強化している。

ウクライナ側は今回の措置に対してコメントを出していないが、EUの他の加盟国や欧州委員会はハンガリーの立場に難色を示している。EUは内部で他の方法を模索し、凍結されたロシア資産を活用してウクライナ支援に充てる案などを検討しているが、現時点での合意には至っていない。今後の協議でハンガリーの拒否権をどう克服するかが焦点となる。

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