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ハンガリー政府、著名ジャーナリストをスパイ容疑で刑事告発


オルバン政権は26日、国家安全保障やロシアの影響力に関する調査報道で知られるジャーナリスト、サボルチ・パニ(Szabolcs Panyi)氏を「外国と共謀したスパイ行為」の疑いで起訴したと発表した。
2022年4月3日/ハンガリー、首都ブダペスト、オルバン首相(Petr David Josek/AP通信)

ハンガリー政府が著名なジャーナリストをスパイ容疑で刑事告発したことが国内外で大きな波紋を呼んでいる。

オルバン政権は26日、国家安全保障やロシアの影響力に関する調査報道で知られるジャーナリスト、サボルチ・パニ(Szabolcs Panyi)氏を「外国と共謀したスパイ行為」の疑いで起訴したと発表した。報道内容が政府高官とロシアとの関係に関わるものであったことが今回の起訴の背景とみられており、言論の自由や報道の独立性に対する懸念が強まっている。

政府は記者の活動が単なる取材ではなく、外国勢力と協力して自国の安全を損なう行為だったと主張している。記者がシーヤールトー(Peter Szijjarto)外務貿易相とロシア側との通信に関する調査を進める過程で、機密情報や連絡先を外国機関に伝えたとされる点が問題視されているという。

首相府の報道官は声明で、パニ氏が「ジャーナリスト活動を隠れ蓑にした諜報活動」を行った疑いがあると述べ、法的に裏切り行為に該当するかどうかは議論の余地があるとの見解も示した。

これに対し、パニ氏自身は容疑を強く否定している。同氏はX(旧ツイッター)への投稿で、「EU加盟国において調査ジャーナリストをスパイ罪で訴追するのは極めて異例であり、プーチン政権やベラルーシのような独裁体制でさえ見られない」と非難した。また、自らの取材活動は不正行為を暴くためのもので、外国勢力と共謀した事実は一切ないと強調した。パニ氏は国内の調査報道サイト「Direkt36」やワルシャワを拠点とする国際調査メディアにも寄稿している。

政府系メディアはパニ氏がシーヤールトー氏の電話番号を外国に伝えた録音を編集して報じ、容疑の正当性を強調している。この録音は承諾なく取得されたもので、報道の仕方にも批判が出ている。パニ氏を支援する国際メディア組織は、政府が報道内容を矮小化し、国民の注意をそらすための「中傷キャンペーン」を展開していると非難しており、政治的動機が強いとの見方を示している。

今回の動きは4月12日に予定される総選挙をめぐる緊張が高まる時期に起きた。オルバン(Viktor Orbán)首相率いる与党フィデス・ハンガリー市民同盟は世論調査で野党に後れを取っており、選挙戦では対ロシア姿勢や国内治安政策が争点となっている。オルバン政権は親ロシア・反ウクライナの立場を強調しつつ、米国の政治家らから支持を受ける戦略も展開しているが、こうした国内外の政治的圧力が報道の自由と民主主義への疑念を一段と強めている。

ハンガリーでは近年、政府による報道機関への影響力行使や独立系メディアへの圧力が国際的な批判を浴びてきた。政府寄りのメディアが市場の大部分を占め、独立系は財政的・制度的に弱い立場にあるとの指摘がある。こうした風潮の中で、今回のようなジャーナリストに対する刑事告発は、言論の自由に対する深刻な脅威と受け止められている。

パニ氏の起訴は、報道の自由や司法の独立性、政府の透明性といった民主主義の根幹に関わる問題として国際的な注目を集めており、EU内外でハンガリー政府の対応に懸念が広がっている。今後の裁判の行方や政治情勢の変化が、同国のメディア環境にどのような影響を与えるかが注目される。

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