ロシアが米スターリンク衛星を標的に、西側情報機関が警告
スターリンクは米国の実業家マスク氏率いるスペースX社が提供する通信衛星ネットワークで、約550キロ上空の低軌道に多数の衛星を展開している。
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西側諸国の情報機関はロシアが米宇宙開発企業スペースXが提供する衛星インターネットサービス「スターリンク」網を標的とする新型対衛星兵器の開発を進めている可能性があると分析している。この情報はNATO加盟国の少なくとも2つの情報機関によるもので、ロシアがスターリンクを封じ込めることで西側の宇宙優位を揺るがそうとしているとの見方が示された。
問題視されている兵器は「ゾーン効果兵器」と呼ばれるもので、極めて小さな高密度粒子を大量にばらまくことによって低軌道を漂うスターリンク衛星を機能不全に追い込む可能性がある。この粒子は直径数ミリ程度で、従来の観測システムでは捕捉が困難とされ、数百から数千の衛星を同時に損傷させることが意図されている。
スターリンクは米国の実業家マスク(Elon Musk)氏率いるスペースX社が提供する通信衛星ネットワークで、約550キロ上空の低軌道に多数の衛星を展開している。このネットワークは軍事・民間問わず世界の通信基盤として重要性を増しており、特にウクライナ軍がロシアとの戦闘で使用する通信・部隊指揮体系の核となるインフラとなっている。
ロシアがこのような兵器開発に動く背景には、スターリンクがウクライナの戦場で果たす役割があるとされる。ウクライナ軍は高速度のインターネット接続を前線の通信や兵器誘導に不可欠な手段として利用しており、この点をロシア側が戦略的脅威とみなしていると西側情報機関は分析している。
だが専門家の間ではこうした兵器の実現可能性に疑問も出ている。スペース・セキュリティ専門家は、無差別に小さな粒子を拡散させる兵器は宇宙空間を制御不能な破片で満たし、スターリンクだけでなくほかの多くの衛星や宇宙ステーションにも深刻な被害を与えるおそれがあると指摘している。これにはロシア自身や中国など同じく軌道上資産を持つ国々のシステムも含まれ、結果として全ての宇宙利用者にとって危険な状況を生む可能性がある。
この新型兵器の開発段階や実際の配備時期については不明で、情報機関が示した資料には具体的な証拠やテストの有無は含まれていない。また、米国防総省やスペースはこの件に関してコメントしていない。ロシアも同様である。
ロシアは公式に国連を通じた宇宙兵器の展開防止を訴えてきた経緯があるものの、実際にこの技術を運用する意図を明らかにしていない。
一方で、カナダ軍の宇宙部門司令官は、粒子を散布する兵器が実際に存在するかどうかは断定できないものの、ロシアが宇宙での敵対的行動を強化している可能性を無視できないと述べた。このことは宇宙空間の軍事化と商業衛星への新たな脅威を象徴しており、今後の国際的な宇宙安全保障の議論に重大な影響を与えるとの見方が出ている。
