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イギリスが「フライドチキン大国」になった経緯

フライドチキンがイギリスで広く受け入れられるようになった代表的な要因が、米国発のファストフードチェーンの進出である。
フライドチキンのイメージ(Getty Images)

イギリスが「フライドチキン大国」と呼ばれるようになった背景には、食文化の変化とファストフード産業の成長、経済・社会環境の影響がある。イギリスはかつて「料理が不味い」「味が薄い」と揶揄されることもあったが、現代の食生活は西側文化および移民の流入と共に大きく変容してきた。

フライドチキンがイギリスで広く受け入れられるようになった代表的な要因が、米国発のファストフードチェーンの進出である。ケンタッキーフライドチキン(KFC)は1965年にランカシャー州で最初の店舗を開業し、以降急速に店舗数を拡大していった。KFCはその後数十年でイギリス各地に広まり、現在ではファストフード文化を象徴する商品として定着している。

こうしたチェーンの普及に加え、鶏肉自体の価格低下や供給の安定、移民文化の影響も背景にあるとみられる。イギリス社会には伝統的に様々な民族が入り混じり、宗教的理由などから豚肉よりも鶏肉の需要が高いという指摘もある。特にカリブ系やアフリカ系のコミュニティがフライドチキンを好む傾向が強く、これが「チキン文化」の浸透を後押ししてきたとの分析もある。

英国人の食生活が変化した理由の一つとして、経済的な実利性と利便性が挙げられる。比較的安価で満腹感が得られるフライドチキンは、中価格帯の外食やテイクアウトとして支持されるようになった。特に都市部を中心に、チキン専門の持ち帰り店が増え、街角の風景になったという。こうした多様な業態は、単なるファストフードからローカルな食文化の一部へと進化し、英国人の日常的な食として根付いている。

また、イギリスでは物価高や生活コストの上昇が続いており、その中で手頃な価格で満足感を得られるフライドチキンの人気がさらに高まってきたという見方もある。物価上昇に伴って伝統的な食材価格が上がる一方、フライドチキンは相対的に廉価で提供できるため、特に若い世代や都市部の労働者層の支持を集めている。この背景には、外食やテイクアウトの選択肢が広がる中で、簡便で美味しいメニューへの需要が高まっている事情がある。

こうした傾向は単に一時的な流行ではなく、イギリスの食文化そのものが多様化し、グローバル化する過程を反映している。伝統料理の代表と言えばフィッシュ&チップスやローストビーフといった重厚な料理が思い浮かぶが、近年は多国籍料理やファストフードの台頭が進んでいる。その中でフライドチキンは、米国のファストフード文化や移民の食習慣が融合した形でイギリス社会に受け入れられ、「国民食」の一つになりつつある。

社会学者や食文化研究者は、こうした変化を単なる食の嗜好の変化としてだけではなく、市場経済や文化の交差点として捉える必要があると指摘している。フライドチキンの普及はイギリスの社会構造や消費文化の変容を象徴する現象の一つとなっている。

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