◎民主主義と多国間主義を支持し、国際的なルール・規範を破壊しようとする試みを許さないし、一歩も引かない。
ハリス(Kamala Harris)米副大統領は16日、独ミュンヘン安全保障会議の演説でトランプ(Donald Trump)前大統領の世界観を全否定し、「彼がホワイトハウスに戻った場合、米国はNATO同盟国に対する安全保障を放棄する」と警告した。
ハリス氏はロシアのウクライナ侵攻により、NATOの安全保障・集団防衛の重要性が一段と増したと強調。それを放棄することは権威・孤立主義に走る「極めて危険な行為である」と断じた。
米連邦議会上院はウクライナ支援を含む法案を賛成多数で可決したものの、下院で多数派を占める共和党の一部議員はこれを「死に体」と呼び、何が何でも否決すると主張している。
この日、ミュンヘンの会場はロシアの野党指導者ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏が獄中で亡くなったという情報により、怒りと不安に満ち満ちていた。
ハリス氏は「民主主義と多国間主義を支持し、国際的なルール・規範を破壊しようとする試みを許さないし、一歩も引かない」と強調した。
またハリス氏はトランプ氏が推進するアメリカ・ファーストを全否定。「米国が孤立すれば、脅威は増大するばかりだ」と述べた。「この不穏な時代に米国が後退できないことは明らかです。米国は民主主義のために強く立ち向かわなければなりません。国際的なルールと規範を守り、同盟国とともに立ち上がらなければならないのです...」
これに先立ち、グテレス(Antonio Guterres)国連事務総長は、ウクライナ戦争だけでなく、イスラエルがガザ地区南部の都市ラファでイスラム組織ハマスに対する大規模な地上作戦を開始する構えを見せていることに言及。世界の現状を「非常に厳しく、困難」と評した。
またグテレス氏は全ての国が深刻な問題を抱えていると指摘。「現在のグローバル・ガバナンスは分裂を激化させ、不満を煽っている」と嘆いた。「今日、私たちは、各国が説明責任を果たさず、好き勝手なことをしているのを目の当たりにしています...」
ハリス氏も同じ懸念を表明し、トランプ氏とその支援者を批判した。
トランプ氏は先週の共和党集会で国防費にGDP比2%を拠出するというNATOの努力目標を達成していない加盟国を「役立たず」と罵り、在任時にNATO加盟国の首脳から「ロシアから攻撃を受けた場合、米国は5条(集団防衛)を守るか」と問われた際、「守らない。むしろ、ロシアに攻撃を奨励する」と発言。欧州に激震が走った。