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米国の「核防衛」におけるグリーンランドの役割、知っておくべきこと

グリーンランドには既に米軍による早期警戒レーダー基地が存在する。
2025年5月20日/米ワシントンDCホワイトハウス、次世代ミサイル防衛システム「ゴールデンドーム(Golden Dome)」構想について説明するトランプ大統領(AP通信)

米国とデンマーク自治領グリーンランドを巡る防衛・外交の動きが注目を集めている。グリーンランドは北極圏に位置し、仮に米中露が関与する核戦争が起きた場合、核弾道ミサイルの飛行経路の要衝となる可能性がある。この戦略的な位置がトランプ(Donald Trump)大統領が同島の重要性を強調する背景にあるとみられている。

トランプ氏は自身が推進する次世代ミサイル防衛システム「ゴールデンドーム(Golden Dome)」構想を実現するためには、グリーンランドの完全な支配が不可欠だと主張している。「リースでは十分ではない」との見解を示し、同島を正式に米国領とする意向を度々表明してきた。ゴールデンドームは数十億ドル規模の防衛システムとして、2029年までの運用開始を目指している。

グリーンランドには既に米軍による早期警戒レーダー基地が存在する。現在の施設は2023年にピツフィク宇宙軍基地として再編され、北極圏上空の弾道ミサイルを探知できる固体レーダーAN/FPS-132が稼働している。このレーダーは約5550キロに及ぶ範囲をカバーし、小型車程度の大きさの物体も探知可能であるとされ、ミサイル発射の初期段階で情報を提供する役割を担う。

こうした地理的利点から、専門家の一部はグリーンランドが米国防衛にとって極めて有利な位置にあると評価する。専門家は「グリーンランドは米国に対し対応時間を稼ぐ良好な地点」と指摘している。

しかし専門家は、トランプ氏の主張には合理性を欠く点があると指摘する。ある核防衛専門家は、米国が長年にわたりデンマークからの領有権なしにグリーンランド内の基地を運用してきた事実を挙げ、「必ずしも領有が必要という論理は成り立たない」と述べる。また、イギリス北部にあるRAFファイリングデールズなど、同様の早期警戒施設が他国領でも米英両政府によって共有されていることを指摘し、所有権と防衛機能は必ずしも同一視されるものではないとの見解を示している。

さらに、ゴールデンドーム構想には宇宙ベースのセンサーなど新技術の導入が見込まれており、これが現地の物理的施設への依存度を低減する可能性も指摘されている。

米国は1951年の米デンマーク相互防衛条約に基づき、グリーンランドへのアクセス権を保有している。この枠組み下で、米軍は同地での活動を継続してきたが、トランプ政権の強硬な立場はデンマークや欧州同盟国との関係に緊張をもたらしているとの分析もある。従来はデンマーク側が拡大要請に応じる形で協力してきたが、所有権を巡る議論は従来の同盟関係に新たな摩擦を生んでいる。

一方でトランプ政権は、軍事的圧力や関税威嚇を通じて外国の協力を引き出そうとした過去もあり、その外交手法を巡って批判が強まっている。グリーンランドをめぐる議論は米欧関係や北極圏の安全保障環境における戦略的均衡を問う重要な課題となっている。

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