ドイツ、破壊工作とサイバー攻撃疑惑でロシア大使を召喚
ドイツ外務省報道官は記者会見で、これら一連の行為がドイツの国家安全保障と民主的プロセスを脅かしているとして強く抗議したことを明らかにした。
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ドイツ政府は12日、ロシアによるとみられるサボタージュ(破壊工作)、サイバー攻撃、選挙への干渉行為を受けて駐ロシア大使をベルリンの外務省に召喚したと発表した。
ドイツ外務省報道官は記者会見で、これら一連の行為がドイツの国家安全保障と民主的プロセスを脅かしているとして強く抗議したことを明らかにした。
また報道官はこのサイバー攻撃や偽情報キャンペーンの目的について、「ドイツ社会を分断し、不信を煽り、民主的な制度への信頼を弱めることが狙いだ」と述べ、これらの活動はハイブリッド戦争の一環だと指摘した。ハイブリッド戦争とは軍事手段だけでなくサイバー攻撃や情報操作を含む複合的な脅威を指す。
外務省は今回、2024年8月に発生したドイツ航空管制機関への大規模なサイバー攻撃について、ロシア軍情報機関GRUに関連するハッカー集団「APT28(通称Fancy Bear)」の犯行と断定。報道官はこのサイバー攻撃が重要インフラを狙ったものであり、国家の安全保障に重大なリスクをもたらすと指摘した。
さらに、今年2月に実施された議会選挙に対する干渉についても、ロシア側に責任があるとの分析を示した。政府当局の調査によると、「Storm 1516」と呼ばれる工作キャンペーンが偽情報や人工生成コンテンツ、疑似ジャーナリズムサイト、捏造された目撃証言を広めるなどして選挙プロセスを攪乱しようとしたという。これは国内外での信頼を損なうことを目的とした情報作戦と評価されている。
こうした活動には偽の動画や偽の投票用紙の画像が使われ、一部では特定政党候補に対する虚偽の疑惑が拡散された。報道によると、偽の「不正投票」映像や誤った郵便投票の情報がSNSやネット上で広まり、選挙の正当性に疑念を生じさせようとする試みが行われたという。
在ロシア大使館側はこれまでのところ明確なコメントを出していないが、西側ではロシアの行為を「容認できない」とする声が強まっている。ドイツ政府はロシアに対して外交的な説明を求めるとともに、今後EUやNATOのパートナーと連携し、さらなる制裁や対抗措置を検討していく方針を示している。
今回の召喚はロシアと西側諸国との緊張が続く中での外交的強硬措置として注目される。ドイツ政府は声明で「こうしたハイブリッド攻撃への対応を強化し、国家の防衛能力と情報インフラの保護を進める」と述べ、再発防止と国際的な協調の重要性を訴えた。
国際社会は引き続きロシアによるサイバー活動や偽情報操作への対応策を模索しており、欧州各国との連携強化が不可欠となる見込みだ。今回の事案は民主主義国家に対するサイバー脅威の深刻さを改めて浮き彫りにしている。
