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ドイツ、「アロー3」ミサイル防衛システムの配備開始、イスラエルから購入

アロー3は高度100キロメートル超、つまり大気圏外において、長距離弾道ミサイルを迎撃可能な能力を持つ対ミサイル防衛システムであり、ドイツにとっては初めての“宇宙域も視野に入れた”早期警戒および防護能力である。
2025年12月3日/ドイツの基地、イスラエルの防空システムアロー3(AP通信)

ドイツ政府は3日、イスラエルから購入したミサイル防衛システム「アロー3」を稼働させたと発表した。これはロシアによるウクライナ侵攻以降、高まる安全保障リスクに対処するため、ドイツの防空体制を強化する取り組みのひとつである。展開拠点はベルリン南方の基地で、今後さらに複数拠点での配備が予定されている。

アロー3は高度100キロメートル超、つまり大気圏外において、長距離弾道ミサイルを迎撃可能な能力を持つ対ミサイル防衛システムであり、ドイツにとっては初めての“宇宙域も視野に入れた”早期警戒および防護能力である。

ドイツとイスラエルは2023年9月、このシステムの購入契約を締結した。アロー3はイスラエルと米国の共同開発によるものであり、この契約には米国の承認も必要だった。契約総額は約38億ユーロとされる。

ドイツの発表によると、今回の稼働はあくまで“初期運用能力”の段階であり、今後段階的に他拠点への展開や追加装備を進め、最終的な“完全運用能力”の達成を目指す。配備予定地は北部、中部、南部に分散され、2030年までに全国を防護圏に収める計画だ。

新システムの導入を受け、国防省は「この戦略能力により、我々はヨーロッパの中心における我が国の役割を確保する」と述べ、「ドイツだけでなく、パートナー国の防衛も守る」と強調した。

アロー3は既存のドイツの防空システム、たとえば地上配備型迎撃ミサイルシステムや中・短距離防空システムとの“多層防衛構成”の最上位レイヤーを担う。これにより、中長距離・高高度からの脅威に対して防護の隙間を埋め、より強固なミサイル防衛態勢を構築する狙いがある。

また今回の導入は、ドイツが主導するEU/NATOの防空構想、複数国による共同防空ネットワークESSI( European Sky Shield Initiative)と整合的だ。ドイツはこのネットワークの中核として、自国だけでなく欧州全体の防衛体制強化に貢献する意図をあらためて示している。

ただし、導入には慎重な声もある。巨額の調達費用や中長距離迎撃に偏重した防衛構成の妥当性、ミサイル防衛の実効性など、防衛政策や安全保障論議の中で今後も議論が続く見込みだ。

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