◎法案をめぐっては、同様の法律がロシアで導入され、反体制派メディアやNGOの弾圧に利用されているとして、首都トビリシなどで大規模な抗議デモや暴動が展開されていた。
ジョージア政府は9日、報道の自由を抑圧すると批判されている「外国エージェント(代理人)法案」を取り下げると発表した。
この法案は外国から資金の20%以上を得ているメディアやNGOを「影響力のある団体・組織」に登録し、必要書類の提出を求めるとしている。
法案をめぐっては、同様の法律がロシアで導入され、反体制派メディアやNGOの弾圧に利用されているとして、首都トビリシなどで大規模な抗議デモや暴動が展開されていた。
野党と活動家たちはガリバシビリ(Irakli Garibashvili)首相がロシア寄りに傾いていると批判。EUも法案が成立すれば同国のEU加盟交渉に影響が出る可能性があると懸念を表明していた。
法案に反対する抗議デモは先週始まり、ここ数日で数万人がトビリシの街頭に集結した。機動隊は催涙ガスや放水砲を使用し、暴徒を取り押さえた。
内務省によると、これまでにデモ参加者133人が逮捕されたという。
与党「ジョージアの夢」は法案取り下げ後に声明を発表。ロシアのウクライナ侵攻で法案の「悪い面」が強調されてしまったと主張し、国民と協議する場を持ちたいと提案した。
地元メディアによると、法案は議会の第一議会ですでに可決されているため、与党は野党に経緯を説明したうえで取り下げプロセスを進めることになる。
デモに参加する複数の活動家グループはツイッターやフェイスブックで連絡を取り合い、法案が廃案になるまでデモを続けるとしている。またデモ隊は逮捕された人々の釈放も求めている。
ズラビシュヴィリ(Salome Zurabishvili)大統領は法案に拒否権を行使すると表明し、与党に考えを改めるよう求めていた。
ズラビシュヴィリ氏は無所属。与党は2018年の大統領選で同氏を支持したものの、就任後、特に外交問題で対立することが多くなった。
野党はガリバシビリ政権について、「親欧米を掲げながらロシア寄りの政策を推し進めている」と批判。活動家たちは党の創設者で、ロシアで財を成したイワニシビリ(Bidzina Ivanishvili)元首相が親ロシア政策を追求していると主張している。
同党はロシア政府との関係やロシアに傾倒しているという批判を繰り返し否定してきた。
ジョージアとロシアの関係は2008年の南オセチア紛争で崩壊。ロシアはこの紛争で南オセチアとアブハジアの分離主義勢力を支援し、ジョージアを3分割した。
それ以来、ロシア軍の支援を受ける分離主義者がこの両地域を実効支配している。
両地域はジョージアからの独立を一方的に宣言。ロシアはこれを承認したが、国際社会は認めていない。