フランス労組CFDT、新たなストと抗議デモ呼びかけ、新政権に圧力
CFDTはフランス最大の労組であり、1964年にキリスト教系労組のCFTCから分離する形で誕生。以降は宗教色を薄め、非宗教的かつ改革志向の組合として発展してきた。
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フランスの労働組合CFDT(フランス民主労働同盟)は24日、前政権の緊縮財政政策を撤廃するようルコルニュ(Sebastien Lecornu)首相に求め、追加のストライキと抗議デモを行うと発表した。
CFDTの書記長らは24日にルコルニュ氏と会談。声明で、「新政権の対応に満足していない」と述べ、10月2日に新たなストと抗議デモを計画していると明らかにした。
CFDTはフランス最大の労組であり、1964年にキリスト教系労組のCFTCから分離する形で誕生。以降は宗教色を薄め、非宗教的かつ改革志向の組合として発展してきた。
2000年代以降、会員数の減少が進む労組界にあってもCFDTは比較的安定した基盤を維持し、現在ではフランスで最も加入者の多い組合となっている。
政治的には左派寄りだが、特定政党との結びつきは希薄で、労働者の利益を優先する実務的な姿勢を打ち出している。
CFDTの委員長は声明で、「首相は労働者の要求に対し明確な回答を示さず、納得がいかない」と述べた。
マクロン(Emmanuel Macron)大統領は2週間前にルコルニュ氏を首相に任命し、26年度予算案について、政党間の合意形成を直ちに図るよう指示した。
ルコルニュ氏はそれ以来、野党との協議を続けているが、組閣も予算案の調整もできずにいる。
CFDTは9月18日にも抗議デモとストを主導。その一部が暴徒化し、機動隊と衝突した。
国民議会(下院、定数577)は今月初め、バイル(Francois Bayrou)前首相の信任決議案を反対多数で否決。これにより、9ヵ月前に発足したバイル政権は崩壊し、マクロン氏は新たな首相を任命するか、議会を解散するかの選択を迫られていた。
フランスの債務は近年EU諸国の中でも大きな注目を集めるテーマとなっている。国の公的債務残高は長期的に増加傾向にあり、GDP比でおよそ110%前後に達している。これはユーロ圏が定める安定成長協定の基準(60%)を大きく上回る水準であり、財政健全化をめぐって国内外で議論が続いている。
債務拡大の要因は複合的である。まずフランスは福祉国家としての性格が強く、医療、教育、年金、失業給付など社会保障支出が高水準で推移してきた。さらに雇用政策や公共部門維持のための歳出も大きく、歳出削減が政治的に困難であることが債務の膨張を招いてきた。
2008年の世界金融危機とその後のユーロ危機では景気後退を受けて財政赤字が拡大し、債務残高が大きく積み上がった。続くコロナウイルス危機でも、経済封鎖に伴う企業支援や失業補償、医療対策費によって財政負担が急増し、債務比率は再び跳ね上がった。これらの支出は国民生活や雇用を守るために不可欠だった一方、財政赤字の慢性化を固定化する要因にもなった。
フランスの債務は主に国内外の金融市場を通じて国債発行によって賄われている。フランス国債は信用度が高く、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和政策やユーロ圏内の投資需要もあり、比較的低金利で資金調達が可能となってきた。しかし金利が上昇すれば利払い負担が重くなり、財政余地をさらに圧迫する危険がある。現在でも歳出に占める利払い費の割合は無視できない規模であり、長期的な財政運営に不安要素を残している。
フランス政府は債務削減のために歳出抑制や構造改革を試みてきたが、強力な労働組合や社会運動の抵抗により、年金制度改革や公共部門縮小はしばしば政治的対立を招いてきた。マクロン政権も年金支給開始年齢の引き上げなどを進めようとして大規模なストライキに直面した。財政健全化の必要性は理解されているが、社会的合意を得るのは容易ではない。